現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その4)

 関白は、人の往来もそれほど多くはない西八条の別邸にしかるべき僧たちを呼び、内密に法要を行うことでささやかな心の慰めとした。もとより望むべくもない逢瀬《おうせ》であったので、いまさら何かが変わるわけではなかったが、今生《こんじょう》の別れを改めて実感し、在りし日々を思い出しながら血の涙を流した。
 月日ははかなく過ぎ、法事などで慌ただしかった日々は次第に落ち着いていったが、皇后宮《こうごうのみや》の御子たちは喪失感に茫然としていたため、関白は姫君を自分の屋敷に引き取ることにした。
(続く)

 関白は密かに皇后の法要を執り行いました。供養と同時に自分の気持ちを整理する意味もあり、これを機に姫君を自宅に引き取ることを決意したようです。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


※Amazonで現代語訳版「とりかへばや物語」を発売中です。