現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その55)

 姫君のために嘘を重ね、罪悪感にさいなまれた尼君は、「気分が優れないので失礼します」と言って部屋の隅で横になった。
 二宮は若い女童《おんなわらわ》を呼び寄せて、姫君がいなくなった時のことを尋ねたが、有益な情報は得られなかった。
「よく分かりません。宮さまがいらした次の夜、牛車の音がした後にいなくなりました」
 このように言われてしまってはどうしようもない。
 権中納言にこのことが知られると体裁が悪いので、形見として単衣《ひとえぎぬ》を譲り受けて屋敷を後にしたが、道中、すっかり懲りて自らの行為を反省した。
「あまりにも行き過ぎた色好みな我が心を神仏が不快に思い、このような悲しい目に遭わせたのだろうか」
(続く)

 結局、二宮は姫君が行方不明となった事情が分からないまま音羽山を後にしました。今回の一件で懲りたようですが、果たして反省して心を入れ替えたのでしょうか。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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