現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その73)

 もはや取り乱しても甲斐《かい》がなく、何事につけても傷心を癒やすことができない関白は、すぐさま宮の宣旨《せんじ》の里に密かに足を運び、音羽山から都に移した時と同じように難なく姫君を自宅に引き取った。その際、姫君に母親の死を悟られぬよう、内密に服喪《ふくも》の用意などを指示する手際は実に見事であった。
(第一巻 了、第二巻に続く)

 程なく関白は姫君を自分の屋敷に引き取りました。皇后の遺言に従った結果ですが、心の隙間を埋める意味合いの方が強かったようです。

 さて、これにて「我身にたどる姫君」の第一巻は終わりになります。
 関白家に引き取られた姫君がどのような人生を歩むことになるかについては、引き続き第二巻でお楽しみください。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


※Amazonで現代語訳版「とりかへばや物語」を発売中です。