現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その27)

「このような思い掛けない時分に、どういった理由でやって来たのかと人々が不審に思います」
 乗り気ではない中納言の君に、権中納言は言葉を返した。
「さあ、どうでしょうか。月日が過ぎるにつれ、この世で生き永らえることができそうにないと思うようになりましたので、たとえ女三宮に『今宵に死になさい』と命じられても従う覚悟でいます」
「無茶を言わないでください。どうして宮様にそのようなことをお伝えできましょう。そもそも、それほどまで思い詰めるようなことですか。関白様から今上《いまのうえ》に申し上げれば、いかにもたやすいことではありませんか」
(続く)

 権中納言は中納言の君(女三宮の女房)に仲介を頼んだものの、相手は明らかに渋っています。恐らく以前から幾度となく断られ続けていると思われますが、その理由は後ほど明らかになります。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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