現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その21)

 帝は退位の準備を進めていたが、二宮《にのみや》は好色に関する悪評ばかりが立っていた上に、本人も元から帝位に就くことをまるで考えていなかったため、次の東宮《とうぐう》にしようと考える者は一人もいなかった。ただ、音羽山《おとわやま》の姫君が行方不明のままであることだけを嘆き、それ以外には関心のない二宮は、ひょっとしたら見つかるかもしれないと、あらゆる場所を垣間見《かいまみ》しながらさまよい歩いていた。
(続く)

 今回から皇后の一人息子である二宮に話題が変わります。
 帝の退位の意向は固く、世間は次の東宮が誰になるかという話題で持ちきりですが、女のことにしか興味を抱かない二宮は完全に候補から外れ、本人はひたすら音羽山の姫君の行方を捜しているようです。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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