現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その11)

 権中納言は、かつて春の夕べに思い掛けず垣間見《かいまみ》した女にすっかり心を奪われ、明け暮れ物思いに沈んでいた。しかしそうは言っても、対屋《たいのや》にやって来た異母妹がどのような容姿なのかが気にならないわけがなく、しかるべき機会はないものかと思い続けていた。
(続く)

 権中納言は音羽山から姿を消してしまった女のことを思い続けていますが、一方で屋敷にやって来た妹のことも気になっています。
 ――二人の女が同一人物だとは、まだ気づいていません。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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