現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その56)

 正気を失った権中納言は、言葉を掛ける余裕もなく女三宮をかき抱いた。
 女三宮は秋の野道の露《つゆ》のように袖の涙が乾く間もなかった。とにかくも、どうしてこうなってしまったのかまったく分からず、心が浮き沈みして思い乱れる様はとても言葉では言い尽くせなかった。
(続く)

 母・皇后宮の死去後、喪すらまだ明けていないうちに、いきなり押し倒されて手込めにされてしまった女三宮は涙に暮れるばかりで、まだ自分の置かれた状況が理解できていないようです。

 それでは、次回にまたお会いしましょう。


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