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現代語訳『さいき』(その10)

 その後、佐伯は無事に豊前国《ぶぜんのくに》の館《やかた》に到着した。本領が安堵《あんど》されたことを知った家の者たちは沸き立ち、毎夜のように盛大な酒宴が開かれ、歌い踊りながら歓喜を分かち合った。
 こうして日々を重ねるうちに三年の月日が過ぎ去ったが、佐伯は女の元に迎えを遣わそうとはしなかった。

(続く)

 佐伯は大分県にある自宅に戻りました。幕府に領地が認められたことを知った人々は喜び、盛大な宴が催されます。
 瞬く間に月日が流れ、――三年が過ぎても女を迎えに行こうとはしませんでした。恐らく初めから放置するつもりだったのでしょう。

 そもそも、二人はただの男女関係ではありません。訴訟問題を解決してくれた一番の功労者に対し、恩を仇で返すような仕打ちです。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


【 主な参考文献 】


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