現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その4)
姫君は右も左も分からなかった幼少期に、火影《ほかげ》の下で見た人の限りない美しさがいつまでも忘れられなかった。その面影は鏡に映る自分の姿と次第に重なり合い、容易に探し出せそうな気がするものの、そうはいってもすぐに見つかるとも思えない。
「どのような前世の報《むく》いで、自分一人がこのように苦しむ宿命なのだろう。雁書《がんしょ》の故事のように伝え聞いた話によると、どうやら自分の両親はいずれもごく普通の身分の者だったらしい。もしその通りの素性なら、どうしてわたしは二人に見捨てら