現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その12)
帝は後宮に集まった多くの女たちを積極的に愛したが、その中で皇后宮《こうごうのみや》に向けられた愛情は限りなく、並ぶ者がいなかった。帝は皇后宮のあらゆる縁者に目を掛けたいと思っていたものの、世の常として、有力な後見人がいない皇后宮は非常に苦しい立場にあった。
故院から後見を託された帝は、この上ない容姿の皇后宮を何とか后《きさき》の位に就けることができたものの、一方の皇后宮自身は、中宮《ちゅうぐう》に対する帝の愛情が自分より劣ることを心苦しく思っていた。その不安は的中し、一時