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現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。

今日聞いた「ゆる言語学ラジオ」で系統的孤立語の「ブルシャスキー語」が出てきた。以前、言語学者の吉岡先生の本を読んでブルシャスキー語に聞き覚えがあったので、言語オタクになれたようで嬉しくなった。
その本はこちら。

パキスタンあたりの、文字のないマイナー言語を記録・分析するお仕事をしている著者が、フィールドワークについて語ったエッセイ本。交通の便が悪い山奥の村で話されている言語なので、現地にたどり着いて記録を始めるまでに沢山の苦労があることが、しみじみと伝わってきた。ちょっと変わった旅行記のような感じで面白く読ませていただいた。

私の印象に残っていることを2つ紹介する。(本を読んだのはだいぶ前のことなので、記憶違いだったらごめんなさい)

1つは、インターネット回線とスマホの普及により、マイナー言語の消滅が進んでいること。
以前は真っ暗な夜の娯楽といえばお年寄りが語ってくれるお話だったが、現代はスマホで多種多様な情報にアクセスし放題となった。それに伴い昔話にしか出てこないような諺が会話から消えていき、消滅の道をたどっている。この事象は、この本の舞台であるパキスタン以外の世界中で起こっていることであろう。

2つめは、言語の消滅は仕方のないことだということ。
言語自体に優劣はないが、経済的な価値の差はある。ある言語が消滅しそうだからといって、その言語の話者に保存を強要するのは押し付けでしかない。その国の公用語や英語を身につけるほうが経済的に豊かになれ、本人がそれを望むのであれば、他人がそれをとやかく言うことはできない。
「消えそうな言語」と聞くと、赤の他人なのに勝手なノスタルジーを感じて「保存しなきゃ」と思ってしまうのであるが、言語はあくまでもツールなのだ。
人一倍言語を愛していそうな言語学者がこんな感じのことを書いているのがとにかく印象的だった。

ちなみに、私の祖父母は大阪人の元商人なのだが、大阪弁の語彙もだんだん減ってきているような気がする。「いらち」とか「わや」とか、今の若い人が日常会話で使うのかな。個人的に興味があるので細々と情報収集していこうと決めた。

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