元早大教授Wのハラスメントに関して


1. はじめに

・この記事を書くことにはいくつかの目的がありますが、その一つは、こちらの件(https://www.bengo4.com/c_18/n_17240/)やそれに関連する件について、いちバイスタンダーであるわたしの記録をいま書ける範囲で書きとめておこうというものです。

・わたしの心身の不調やそもそもの能力の限界もあり、一連の流れを網羅するようなまとめ記事にはなりません。渡部直己(以下、W)の件については、深沢レナさんが中心になって運営されている「大学のハラスメントを看過しない会」の公式HPに参考資料などとともにとても精緻にまとめられておりますので、基本的な事実の確認などはそちらでお願いいたします。

・これまでの歴史を鑑みるに、わたしのような無名のネットユーザーでもスラップ訴訟を起こされる可能性はあり、万が一それが起きた場合にわたしには裁判をする時間的余裕や経済的余裕がなく、また、そもそも加害者たちの名前を何度も記したくないという思いもあるため、Wをはじめ加害者および二次加害者の名前を伏せたり、いきなりイニシャル表記で書いたりすることがあります。それにより、やや暗号的な文章になってしまい、読み手の方に対して親切な文章にはならない可能性が高いです。

・わたしが被害者支援についてまだまだ勉強中ということもあり、わたしの書いたことが二次被害を生んでしまう可能性もありますが、この記事はそもそも「加害者および二次加害者たちやそれらを看過している業界人たちに対する怒り」を前提にして書かれているものなので、万が一二次加害をしてしまう結果となった場合は、すぐにしかるべき対応をいたします。

2. 一審判決まで

わたしがWの件を最初に知ったときに感じたのは、いまと変わらず、加害者に対する怒りでした。そして、さまざまな暴力は構造的な支えがあって肥大化していくように、すぐにそれがW個人の問題ではなく、Wを取り巻く人々や早稲田という大学の問題でもあることを知り、怒りは瞬く間に増幅されていきました。とりわけ、わたしが過去にとある仕事をしていたときにWの弟子とされるIと会ったことや話したことがあったため、本件はより身近な問題としてわたしの中に植えつけられました。そんなIが指揮している早稲田文学編集室がなかなか声明を出さなかったこと、また、やっと出したと思ったらその内容が言い訳がましいものであったことも、当然怒りの種の一つでした。
それなのに、ついここ最近までわたしの仕事や経済状況は安定している状態とはいえなかったこともあり(それはいまでもそうではあるのですが、2018~2022年ごろはとりわけ)、わたしは本件に積極的にかかわることができていませんでした。看過しない会さんのTwitterやHPの一部を見ることはあっても、HPにある文章や資料すべてに目を通したのは一審判決後でした。

3. 一審判決後

このときのことを思えば、Wのハラスメントを知ったときの怒りはまだまだかわいいものでした。以前に比べたらある程度は生活ができるようになっていたこと、また、一審の判決内容があまりにも被害者のことを考えていない横暴なものであったことから、わたしはTwitterで積極的にこの件についてふれるようになっていきました。ハラスメントやさまざまな差別問題に対する関心が2018年当時に比べてより大きくなっていたということもあったのだと思います。「Predator: The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)」を観てすぐだったことももちろん関係していると思います。
上述のとおり、看過しない会さんのHP上の文章や資料にしっかり目を通したのもこの時期でした。それらを読んでわたしが抱いた一番大きな感情は、WやWを擁護する者や早稲田に対するさらなる怒りでした。

また、二次加害は一審判決後にもどんどん起こっていきました。それら二次加害者に対して直接的にも間接的にもこちらからいくつかのはたらきかけをしましたが、どこの馬の骨かもわからない無名のわたしが、しかもTwitterでなにかを言ったところで、二次加害者たちが行動をあらためたり謝罪をしたりすることはありませんでした。評論家のSは謎のフェアネス理論を展開し、決してこの件についてコミットしようとしませんでした。力をもっているにもかかわらず。あまりにもひどい他人事感は、Sの著作の内容を思えば「やっぱりそういう人だったのか」と納得できるところがありますが、だからといって怒りがおさまるわけではありません。おさまるわけがない。

直接的に二次加害はしていないけれど一審判決後に本件についてなにも言及していないアカデミアや、(便宜的にこの言葉を使いますが)論壇や文壇の人々に対する怒りも日に日に増していきました。
川上未映子は2018年6月24日に「異常な常識は変えていきたい」というタイトルの文章を発表していますが、一審判決後からいまに至るまで、あらためて本件についてなにか明確に言葉を発したことはないかと思います。上述の文章は「今はきちんとした調査結果の報告を待ちたいと思います」という言葉で締めくくられているにもかかわらず。
フェミニズムや反セクシズムを掲げていると思われる人々の大半もだんまりだった、そして、いまもだんまりのままだと思います。

そうした怒りとともに日々Twitterをしていく中で、深沢さんや看過しない会の方々にご迷惑をおかけしてしまったこともありました……。ずっと後悔しています。

4. H・Iに関すること

二次加害の中でもとりわけひどかったのが、伊藤比呂美(以下、H・I)によるものでした(看過しない会さんのHPに詳細なまとめがありますので、事実確認はそちらをご参照ください)。H・Iは看過しない会さんの要望書に応じることなく、言うだけ言ってTwitterを更新しなくなり、かと思えば最近になって何事もなかったかのようにTwitterを更新するようになり、新刊の告知をしたり、とうとう散歩中に見た火事の写真をアップしたりしている始末です(話はそれますが、あのようなツイートをできること自体が、二次加害者の二次加害者たるゆえんだと思います。H・Iにとっては、すべてがまさに対岸の火事なのでしょうか)。
Twitter復活までの長期間H・Iはさまざまな仕事をしていたので、わたしはH・Iと仕事をしている人やH・Iに仕事を与えている出版社や新聞社などに問い合わせを何度も送りました(一部ですが、たとえば中沢けい、高橋源一郎、中島岳志、チーム ブレイディみかこ、NHK、『婦人公論』編集部、春陽堂書店、東京堂書店、鳥影社、築地本願寺など)。また、Wのハラスメント発覚後にWの単著を出版した会社である月曜社と河出書房新社にも「ハラスメント発覚後にWの単著を出すとは、どういう考えなのか」といった問い合わせも送りました。しかし、やはりわたしのような存在がなにを言ってもむだなようで、99%は無視されました。唯一、日本近代文学会は一度だけ返事をくれましたが、その返事の内容があまりにもハラスメントについて無理解でひどいものだったので再度こちらからも返信を重ねたところ、なにも返ってこなくなりました。

あまりのひどい状況に辟易し、まったく動かしていないFacebookアカウントを使い、10年ほど前に大学でジェンダー論を受講していたときの先生に連絡をとってみました。けれども、H・Iがいかにひどいかというところでは意見が一致したものの、川上未映子をはじめとするだんまり組に対しては「ひとりの人が世の中のあらゆる問題に誠実に対応できるわけではない」といった趣旨の擁護をされていて、絶望が深まるばかりでした。

5. 二審判決を迎えて

そんななか迎えた2024年2月22日の二審の結果ですが、わたしとしてもとうてい納得のいくものではありませんでした。1審から賠償金が増額されたとはいえ、660万円の損害賠償請求に対して約100万程度です。人の気持ちを、人の人生をなんだと思っているのでしょうか。当然のことながら、これは金額だけの問題ではありません。なぜこれがハラスメント認定されないのかといった驚愕の結果には嘆息するばかりです。
Wも早稲田も過去に反省の意思や謝罪の言葉を示したことがありますが、本当に反省しており、本当に謝罪を貫徹したいと思っているならば、こんな結果にはなっていないはずです。
また、「早稲田大学で教育・研究に携わる有志の声明」というページもありますが(Twitterを通じてこちらの存在をわたしに思い出させてくれた方、ありがとうございました)、こちらは今後なにか動きを見せるのでしょうか。

6. 最後に

一方で、深沢さんは去年の10月から動物問題について精力的にご活動をされており、なんと先日は「動物問題連続座談会」が、米国を拠点とするグローバルな社会活動家のコミュニティ「The Pollination Project 」のDaily Grant助成というものに採択されました。わたしはノン・ヴィーガンではあるのですが、自分ができる範囲でアニマルウェルフェアにコミットしていきたいと思っているため、今後の看過しない会さんのご活動も大変楽しみにしています。

深沢さん、支援者の方々、ほんとうにおつかれさまでした。

ご支援いただけますと大変助かります。生活費ほか、わたしが生きていくうえで必要なものに使わせていただきます。