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急な人生相談

 いろんな人に 声をかけられることが多いのですが、その中の面白かった経験のひとつを書いてみます。



ある日、デパートの屋上のベンチで ひとり座って ぼんやりひと休みしていました。
そこへ ひとりの若い青年が 恥ずかしそうに にこにこしながら 近づいてきました。

わたしより 20歳くらい下の大学生のようでした。

「あの…、少しいいですか?」

 お店の場所とか そういうの聞かれるのかな、と思いながら にこっとしながら 聞いてみると

「いきなりで申し訳ないんですが。僕、今 将来のことで悩んでるんです」

え?

「話聞いてもらっていいですか?」
と言うので 何が何だかわからないけど 断る理由もないので 「わたしでよければ」と 聞くことにしました。


聞くと、
ご両親ともに 教員らしいのです。それで、ご両親は その息子にも教員になってもらいたいと 強く言われているようでした。
だけど 本人は 他に進みたい道がある、という内容でした。

「それで ずっと悩んで 迷っていて… どう選んだらいいと思いますか?」
ということでした。

暫く 真剣に考えてしまいました。

「うーん… 結果として どうなるかは 先のことはわからないわけだし…、でも わたしが 今 話を聞いていて思ったのは やりたいことをやる選択もありなのではないか、と思いました。ご両親は反対するだろうし がっかりさせるかもしれないけど こんなに悩んで わたしに話してくれたじゃないですか。ご両親の気持ち とても考えてる方ですよね。なかなか大変なことだと思うけど 何年かかっても その先で ご両親に認めさせる気持ちでやるといいと思います。選択は また帰って ゆっくり考えて ご自分で決断するのがいちばんいいです」
と 話しました。

その青年の表情は 一気に ぱぁ、っと明るく笑顔になりました。

その笑顔を見て きっと答えは決めていたのかもなぁ、と感じました。誰かのひと押しが必要だったのかも知れないです。

「あー、相談してよかったぁ。なんかすごく気持ちが軽くなりました!ありがとうございました!」
そう言って 青年は立ち去りました。

もう 顔は思い出せなくても ふと その青年のことは 今でも思います。


その思い出が わたしには有り難くて その時の青年もまた わたしの記憶の一部となり、わたしの力になってくれています。


きっと 彼なら 今も元気に周りの気持ちを考えながら また悩みながらも 笑顔で過ごしているんだろうと、祈りもこめて これからも ふと思い出せる自分でいたいです。

わたしも負けないぞ、って感じです。


ほんのひとときな出会いでしたが、心が温まるのです。
 人間苦手なわたしでも こういう瞬間の大切にしたい繋がりの景色は 好きです。


今日 またふと思い出したので 残しておきたいと思いました。




ヘッダー画像は ロクさんの「知らない場所へ」をお借りしました。





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