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「仕事を楽しむ」ためにオススメしたい実践メソッド

「何だかいつも楽しそうですよね。」「どうやったら楽しんで仕事ができますか。」そのように言われることが増えてきた。既に研究では「幸福度の高い社員はそうでない社員に比べて創造性が3倍、生産性が1.3倍」であることがわかっている。心の充実が仕事の成果に直結するなら、それを実践するまでだ。そのように思ってきたが、一言で「楽しむ」といってもそう簡単なことではなく、実はとっても奥が深い行為なことに気づいてきた。しかも、最近では「いやー、僕パリピキャラじゃないんで」など同じ「楽しむ」を巡って誤解と思われる反応も増えてきた。ここでは自分なりの経験から導き出されたメソッドを整理したいと思う。その前に、2つの誤解を解いておきたい。

誤解①楽しい仕事は与えられるもの

公務員になりたての頃、勤務時間は早く終わってほしかったし、「つまんないなー」と思いながら取り組む仕事も少なくなかった。当時は「福祉の仕事はきつい仕事だからしょうがない。区役所コンサートの担当になったらきっと楽しいんだろうな。」と考えていた。この世には「楽しい仕事」と「楽しくない仕事」があり、そのどちらも組織から与えられるものという考え方だ。その場合、たまたま担当になった仕事が楽しそう(精神的、肉体的に負担が大きくないイメージ?)かどうかで仕事の楽しさが決まる。これが最も典型的な誤解だろう。仕事を楽しめている時に強く思うことは、「楽しい仕事は常に能動的である」ということだ。福祉でも区役所コンサートでも、昨年度と同じ事をルーティンのように繰り返す時、上司から言われたことをそのままやる時に楽しさなんて感じない。自分から楽しむポイントを見つけられた時に初めて「楽しい」と感じることができる。楽天の三木谷社長が言った言葉が本質的だ。「面白い仕事があるわけではない。仕事を面白くする人間がいるだけなのだ。

与えられるものじゃない

誤解②「楽しい」は「まじめ」の対義語

ここに来て、「仕事は楽しんでやる方がいいよね」という考え方が世間にも少しずつ広がってきた。同時に、「楽しく仕事をする」ということを「意味や成果は二の次にして自分が楽しむことを優先すること」「まじめにやらないこと」「考えずに感覚的に実践してみること」と勘違いしている人を散見するようになってきた。それに対して「仕事は楽しめばいいものじゃない!」と主張するのは甚だごもっともだ。手段として遊びを採り入れることや創造性を高める手段として実践主義になることは否定するものではないが、楽しむことはあくまで手段だ。守破離でいえば「破」から「離」の段階でようやく到達する境地だろう。志村けんさんは「まじめにふざける」を哲学にコントを作っていたと言われるが、その状態を高度な思考と実践の末に到達するステージだとすれば、「楽しい」は「まじめ」の対義語どころか「究極のまじめ」に他ならない。

楽しいと真面目

そんなふうに考えられるようになったのは、つい最近のことだ。きっとこっちの方が良いに違いない、と思いながら実践を繰り返し、仕事を楽しめるようになった今の自分。そんな自分がなぜ楽しめているのかを因数分解し、再現性を高めるためにコツらしきものを5点(4+番外編)にまとめてみた。

仕事を楽しむためのコツ①前提として仕事の基礎知識と基礎スキルを習得する

仕事を楽しむのは高度な創造性が必要なことを考えると、その前提としてベースとなる業務の基礎的な知識・スキルは必須である。公務員であれば法文解釈や文書・資料作成、組織内外とのコミュニケーションスキル、役所機構や意思決定プロセスの理解は不可欠だ。これを飛ばしてしまうと「楽しむ=パリピ>成果」という残念な状態になってしまう。就職、転職、異動などにより新たな仕事に直面している時は、楽しむことよりも成果を出すために必要なことを地道にマスターすることを優先するのが近道だろう(ただし新鮮な興味は大切にしておく!)。

仕事を楽しむためのコツ②自分の強みを生かす

基礎的な知識・スキルがある程度マスターできたら、自分の強みを生かせる方法を模索し始めることだ。まずは自分の強みを知る。世の中にはストレングスファインダーをはじめとするタイプ別診断も多くある。また自分の興味や生かしたいスキル、特別な経験などを棚卸し、リストアップしてみることも重要だ。強みは一度言語化すると自覚しアンテナが立つようになる。本当に強みなのか、これも強みといえないか、これは強みにしたい、など言語化をきっかけに思考が進んでいく。このきっかけを作ることが大事だと思う。

私で言うと、最初の職場は福祉分野できついことが多かった。そこから脱出することを優先し、業務の種類にしか目を向けていなかったが、基礎的なスキルは嫌と言うほど鍛えられ、行政の役割について度々考えさせられた。次の職場(企画部門)である程度、市役所の全体像が見え、自分の興味と結びつけることを覚え、段々と自分がやりたい仕事を深く考えるようになった。そして国への出向で予想外の産学官連携の仕事をしながら未知の業務に対し自分がどのように成果を挙げられるか、これは本当に自分がやりたい仕事なのか、をグルグル往復しながら悩んできた。国全体のことを考えるようになると同時に、これを天職と言い切り生き生きと仕事をする人たちを見ながら、時に刺激を、時に不安を感じてきた。その中でもアンテナを張り続け、ふと興味の惹かれたコミュニティデザインや地域共創の分野に飛び込んで、試行錯誤しながら今に至っている。そういえば、今の業務も一年目は相当勉強した。コミュニティの歴史や定義に関する論文を読みあさり、住民の方や関係者と話しながら地域特性を把握した。その間に大学院で習得したシステム思考やデザイン思考、プロジェクトマネジメントのスキルを活用して、自分が取り組む方向性の仮説を立ててアクションプランに落とし、実践した。その積み重ねで楽しい今がある。そう考えると、楽しむってそう簡単じゃないんだよなぁと実感する自分がいる。

仕事を楽しむためのコツ③全体像を掴み、意味を見出す

さて、視点を変えてもう一つのコツを押さえたい。それは、全体像を掴み、取り組んでいる仕事の意味を見出すということだ。特に公務員の仕事は縁の下の力持ち的な仕事が多い(感謝の言葉をストレートに伝えてもらいにくい)だけに、なおさら気を付けたい。ここでは有名なレンガ職人の話が参考になる。3人のレンガ職人がいて、自分がどんな仕事をしているかという役割認識と志の違いでモチベーションが全く異なっている逸話だ。レンガを運んでいる仕事は一緒だが、3人はそれぞれ「毎日毎日同じ仕事の繰り返しできつい」「面白くないが家族を食べさせるためには仕事があるだけ良い」「世界一の大聖堂を作る仕事に関われて最高」と述べ、当然だが最後の人は最も生き生きと仕事をし、そしてついにはその大聖堂が完成し、現場監督になったその職人の名前が大聖堂の名称としてつけられたという良い話。JAXAのロケットの部品であるネジを作っている企業、10万世帯のトイレの消臭剤のパッケージを作っている企業など、BtoBであっても出口に目を向けることで意義を見出し、その中でどの部分(役割)を担っているのかを認識することで責任感を持つことができる。これがやる気とモチベーションの原動力になるだろう。

仕事を楽しむためのコツ④個人的な興味を仕事に結びつける

企画の仕事をしていた時代に、個人的にファンだった地元のサッカーチームのミニ展示会を開催したいと考えた。私はただのファン。担当している地域にはサッカークラブの練習場があって、あまり知られていなかった。このまま展示会をするだけだったら私の自己満足と個人的趣味の表現に過ぎず、税金の使い道としていかがのものか。自分自身でも葛藤があった。その時に言われた一言が私を動かした。「自分の好きなことをどうやったら仕事に結び付けられるか。そこを上手くやるのが腕の見せ所だよ。」仕事にするには何が必要か。市とサッカークラブはスポーツパートナーだ。それならば、サッカークラブを通して街の魅力を発見してもらえばいい。区役所庁舎に展示コーナーを作って、ファンじゃない人にもクラブの裏側を知ってもらい地域の愛着を高めるきっかけを作ったり、図書館や公民館と連携してスタンプラリーを実施し、クラブにも特製のエコバッグを作ってもらって参加者に配布した。結果は上々で、区役所に手続きに来た人の多くが展示スペースに足を止め、スタンプラリー用に用意したエコバッグはこどもたちの行列ができて全て配布完了した。自分の好きなことを仕事に結び付けられれば、そのプロセスに大変なことがあってもほとんど苦にならなかったことを思い出す。好きなことが仕事の原動力になることの何よりの証明だろう。

仕事を楽しむためのコツ⑤番外編:個人の力を最大化させるチーム環境とマネジメント

ここまで仕事を楽しむために自分なりに取り組めることを書いてきたが、それを実現するためにはチームや組織の環境が不可欠だ。心理的安全で、強みが発揮できる組織運営がされなければ個人の力は最大化しない。仕事を楽しむには個人の努力に加え、マネジメント側の環境整備が欠かせないことも押さえておきたい。

まとめ

今回は「仕事を楽しむ」をテーマに、よくある誤解や楽しむコツをまとめてみた。仕事を楽しむことは実に高度な創造的行為であることが確認できたと思う。私なりの経験を因数分解して導き出したメソッドを図にすると以下のとおりになる。

タイトル

一般的には「自分がやりたいこと=will」「自分ができること=can」「自分に求められていること=must」の円の重なる部分が大きければ幸せ、ということが言われている。

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共通しているのは「自分自身を良く知って、強みやできることを伸ばし、自分の力をやりたい分野で発揮し、組織や社会の要請に応える」ということだ。これが「仕事を楽しむ」の定義であり、これを実現するためには日々考え、磨き、試行錯誤していくのだ、という実にシンプルな話に落ち着くことが確認できた。え?つまんない? 楽しむのは実に高度な創造的行為なんです!

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