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【読書メモ】『日本語の技術 ―私の文章作法』

今回は、最近読んだ文章関連の本についてご紹介します。

『日本語の技術 ―私の文章作法』(中央公論新社)
著:清水幾太郎
 
社会学者・ジャーナリストとして活躍し、ロングセラー『論文の書き方』の著者としても知られる清水幾太郎(1907-1988)の著書。
自身の執筆経験も交え、「日本語を知り、よい文章を書くための34の方法」を紹介した一冊です。

近所の本屋さんでたまたま見つけ、内容が魅力的だったのと、比較的読みやすそうだったので購入しました。
目次は大きく、
 
1、文章らしい文章とは何か
2、良い文章を書くための方法
3、日本語を知るための方法
4、話し、聞くための方法
5、読み、考えるための方法
 
の5部構成。各章に5~10個ずつトピックがあり、1トピック10ページ前後なので、少しずつ読み進めるのはもちろん、気になるトピックだけ読むといった読み方もできます。
 
なかでも印象に残っているのは、下記の部分。

読む人にとって本当に重要な事柄であるならば、どんな控え目な表現でも、読む人の心を強く捉えるのでしょう。表現の強弱や巧拙の問題より前に、他人に伝達すべき重要な事柄を自分が持っているかどうか、という根本問題があるのです。それがあって初めて、文章の工夫というのも意味があるのです。それがなかったら、文章など書かずに、静かにしていた方がよいように思います。

特に前半部分の、「読む人にとって本当に重要な事柄であるならば、どんな控え目な表現でも、読む人の心を強く捉えるのでしょう。」の部分はハッとさせられました。
ちなみに、「他人に伝達すべき重要な事柄を自分が持っていない…」という場合は、コソコソと本を読み、コッソリと思索を続け、それを親しい人などに話さないことが有効なようで、そうしているうちにやがて、エネルギーが自分の中で蓄積され、外に向かって文章を書く力になるそうです。
(※なぜ、親しい人などに話してはいけないかというと、話してしまうと、それで満足してしまい、書くところまで思いが行かなくなってしまうから…みたいです)
 
また、文章を書くことを建築物を作ることに見立てている部分も面白いと思いました。
文章も建築物も、
「①まず完成形をイメージする」→「②必要な材料・パーツを用意する(※文章の場合は情報や主張など)」→「③適切な順番で組み立てる」といった共通点があるとか。
 
思い返すと、私は、最初の段階で文章の完成形は特にイメージせず、書き出してしまうタイプ。なので、今後は文章を書く前に、まず完成形をイメージしてみようと思いました。
事前に完成形をイメージすることで何かが変わるのか…気になるところです。
 
あと、印象に残っている言葉として、「すべての文章は証明である」といった一節がありました。いろいろな言葉・情報を使って、自分の主張が正しいことを証明するのが文章だ…ということらしいです。
何というか、この言葉を意識すると、思考のブレが減るというか文章に軸ができるというか…そんな気がします。
「この文章は、自分の主張(伝えたいこと)を証明できているか…」、書いた文章を見直すときに、特に効果を発揮しそうな言葉ですね。大切にしたいです。
 
と、『日本語の技術 ―私の文章作法』は、文章を書く上でのちょっとした武器を手に入れたような気持ちになれる一冊。文体も語り口調で柔らかく、話を聴くような感覚で読めるのでおすすめです。

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