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水の空の物語 第3章 第20話

 川を上って行くにつれて、蜜柑の木の根元が見えてきた。

 少しだけ、地面が見える場所がある。そこが休息の場だろう。

 休息場では、地面についてしまうくらい長い金の髪の、誰かがすわっていた。スーフィアだ。

 髪と白い衣を、円を描いて地面に広げ、人形のようにすわっている。

「夏澄ーっ、飛雨、風花ーっ!」

 スーフィアが大きく手を振った。

 彼女のひざの上には、夏澄が預かったうさぎがいた。にわとりはスーフィアの横でしろつめ草をつついている。

 他にも、数匹のうさぎが草を食んでいた。

 よく見ると、木々の間に鹿もいた。鳥や蝶もいる。

 鳥のさえずりが響く中、皆、陽射しを浴び、のんびりと暖まっているように見えた。

 蜜柑の木のとなりにある泉のほとりにも、少しだけ地面がのぞいているところがあった。

 そこには、さっきのワンピースの少女がいた。

 正座をして泣きべそをかいている。麦わら帽子をかぶっていた。

 隣には、彼女を見張るように少年が立っている。腕組みをして、蜜柑の木に寄りかかっていた。

「先程は、彼女が無理難題を押しつけたようで、申し訳ありません」

 優月が苦笑いした。

「ああやって、反省させておりますので。……彼女は、桃色しろつめ草の精霊で、草花そうか。隣は湖龍の一族の立貴たつきです」

 龍というだけあって、立貴はきつい顔立ちをしていた。服も群青の和装で、草花たちと雰囲気が違う。

 優月は白いスラックスと、立ち襟のシャツを着ていた。優雅で、どこか貴族のようだった。

「あの……、初めまして」

 風花の言葉に、立貴は黙ったままだった。
 軽く頭だけを下げた。



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