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チームで翻訳することでインプットがより深まる

これは「CivicTech & GovTech Advent Calendar 2022」20日目の記事です。

コロナをきっかけにシビックテック活動に参加するようになり2年半ほど経ちました。Code for Japanのコミュニティを通じて、2021年11月頃からシビックテックプロダクト開発ガイド「Don't Build It」を日本語翻訳プロジェクトに参加しました。ガイドの著者であるLuke Jordan(ルーク・ジョーダン)さんがCode for Japan Summitのキーノートスピーカーに登壇してくださり、そこで日本語版のガイドを公開しました。現在もサミットのサイトにてPDF、またはepubフォーマットでダウンロードが可能です。シビックテック開発にかかわらず、開発に関わるすべての人にぜひ読んでもらいたいガイドです。

また、Don't Build Itの原本があるMITガバナンスラボのページにも日本語版PDFを設置していただきました。

今回は翻訳で気をつけた点、プロジェクト内でどうやって翻訳作業を進めたのかなど振り返りながら話したいと思います。

翻訳作業の流れ

プロジェクトメンバーがLukeさんに日本語に翻訳したいと連絡したところ快く承諾してくださり、デザインファイルを共有してくれました。そこからまず文章データだけを抜き取り、翻訳ツールのDeepLを使用して一気に日本語に訳しました。

DeepLの翻訳精度は高いので多少分かりにくいところはあっても内容は理解できます。ここからより読みやすくするために文章のリライトを行います。言葉の表記を整え、文章の引っかかりを取り除くことで全体がなめらかで自然な日本語になります。ここの作業が一番難しく時間がかかりましたが、メンバーで何度も話し合いながら翻訳を完成させていきました。

主語のある英語、主語がなくても伝わる日本語

直訳では間違っていなくても主語のある英語を日本語に訳すと不自然に聞こえることがあります。日本語では主語がなくても誰/何のことを指しているのか伝わりますが、それに対して英語は主語がないと大抵の文章が成り立ちません。英文を直訳すると主語がつくため文章が長くなり馴染みのない日本語に聞こえます。

言語ルールを決める

内容が開発ガイドであること、元の文章が英語というのもありカタカナ表現や業界用語が多くあります。表記揺れや用語の不統一を防ぐためにメンバーで共通の言語ルールを作成しました。例えば、翻訳ツールで訳した文章には技術者、開発者、エンジニアという言葉が出てきましたが、これらは全て同じ業種を意味するので統一の表記にしました。他にも英語表記はそのままにするのか、英語特有な表現はどう訳すかなどメンバー内で意見を出しながら決めていきました。

これは私の好みではありますが、できるだけカタカナ表記を控えたいと思いました。イベントに参加しているときやブログ記事内など、以前に増してカタカナの言葉をよく目にするようになりました。仕事の打ち合わせ中に「スケジュールをシュリンクする」と聞いたときはビックリしました。英語のshrinkの意味を知っていたので推測することができましたが、なんでスクジュールを縮めるとは言わないんだろうと思いました。データを圧縮することもシュリンクというみたいですが、英語でデータ圧縮を意味するときはcompressを使うことが多いです。なんで日本語で伝えることができる言葉なのにカタカナを使うのか、正直、疑問です。
私がカナダに来たとき、英語だと思って使った単語が和製英語だったり、カタカナで覚えた英語が間違った認識だったことがたくさんありました。海外に住むようになったから余計に目につくようになったのもあると思いますが、カタカナ表現が増えた日本語に少し寂しさを感じます。できる限り日本語で表現できるところは日本語にしたい、英語の表現と異なるかもしれないけど日本語の言葉を探したいと提案しました。

各自で意訳作業、比較する

DeepLで日本語に訳した文章をメンバー各自でチェックし再度翻訳しました。そのあと翻訳の違いがある部分を比較し、文章全体を改善していきました。気になったところは何度も話し合い、新たな翻訳の案を出してはまた考え、より良い表現が見つかるまでこだわりました。月に1回、多いときは週に1回メンバーで集まり翻訳を完成させました。

Code for Japan Summitで日本語版を公開

翻訳作業が終わり次のデザイン作業がなかなか進まずにいたころ、今年9月のCode for Japan Summitまでに日本語版PDFを完成させることになりました。サミットのキーノートとしてLukeさん登壇していただくことが決まり、サミットに向けてPDFを配布することになったからです。

英語のデザインファイルを元に日本語版のデザイン作成を進め、メンバー全員でデザインプレビューを確認しながら校正し最終版に仕上げていきました。Googleドキュメントで作業を進めていた翻訳文がデザインに流し込まれ完成が近づくことにワクワクしながら、改めて読むDon't Build Itの内容に皆が刺激を受けていました。翻訳作業で集まり内容を深めるたびにガイドの素晴らしさに感動し、いい文章だなぁと毎回話していました。私にとってもこのガイドに出会ったことで開発に対する考えが変わり、これからのキャリアを見直す良いきっかけになりました。

まとめ

日本語版が完成するまで時間がかかってしまいましたが、作業を止めず少しずつでも進めることでプロジェクトを終えることができました。長くなればなるほどモチベーションが下がっていくことはよくありますが、一緒に作業してくれるメンバーのおかげで無事完成することができました。著者はこう伝えたかったのでは?この文章はこの日本語訳の方が合っているなど、メンバーで意見を出し合い一緒に翻訳を進めることで自身のインプットがより深まったと思います。

プロジェクトを持ちかけてくれた今村さん、メンバーの松本さん、直樹さん、有意義な時間を本当にありがとうございました!

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