光への道は遠く　『好男子の行方－三億円事件－』

2023年11月8日（水）19時半開演
＠すみだパークシアター倉
￥15,000（3作品チケット）

さて、昭和大事件連続上演のすみだパークでの演目はこれでラスト。いさをさん曰くコメディだということで、肩の力を抜いて拝見～。
いやまあコメディだったし、序盤から客席からは笑い声が起こっていたし、実際アタシも笑ったけど。役者さんたちはとてもよかったけど。観終わった後にはな～～～んか釈然としない気持ちでいっぱいになってしまった。そしてどこが演出プランの見直しになったのだろうか、とふと思ったり。

1968年12月、東京府中で輸送中の現金三億円が白バイ警官に偽装した男に奪取される。現金を運んでいた銀行員たちは「犯人は色白の好男子だった」と証言するが、そこには他人には言えない秘密があった。金を奪われた関東信託銀行の銀行員たちは、この前代未聞の強奪事件にいかに対処したか？　三億円事件を金を奪われた銀行員たちの視点で描く。

公式サイトより

藤岡（支店長）　若杉宏二
松平（次長）　坂元貞美
中村　筑波竜一
関根　五島三四郎
高山　杉木隆幸
古田　田中穂先
東野　銀ゲンタ

被害者である銀行員たちは犯人の容姿について証言をするが、実は全員がちゃんと顔を見ていなかったというのがそもそも。犯人はヘルメットを被りマフラーでマスクをしていたし、土砂降りで視界が悪かった。
自分たちのミスで金を奪われたのに犯人の顔を見ていないとは言えず、上役に相談の末、曖昧な供述をそのまま押し通した。そんなのあり？！
そこからはじまる喜劇のような悲劇が時効までの7年間続いたというお話。

体裁が悪いからとついた嘘が嘘を呼び、背格好が似ているからと若手行員の東野を犯人に見立てるうちにモンタージュまで東野の顔で作ってしまう。お客や身内まで手配写真に似ていると言われ続けた彼が不憫すぎる。
容疑者であった学生が自死し、彼が犯人かどうかの面通しでは「自分たちが作ったモンタージュに似ていないから」という理由で犯人ではないと言ってしまう。
何もかもが捜査を混乱させているのに、保身（と言えるかどうかも疑問だが）のために嘘をつきとおしちゃう。まさか～！　ドタバタコメディとして描かれているが、あまりに馬鹿すぎてスンってなってしまったよ。

この事件、殺人や傷害はなかったし、盗まれた金は保険で全額補償されたし、被害者に実質的な被害がなかった訳よね。警察は面目が立たなかったかもしれないが、犯人が捕まらなくても被害者は困らない。緊張感がないんだろうな。
前の記事で書いた同調圧力の件、まさにここでも。
事件から7年後の時効の日、秘密を共有した七人がまた集まってその瞬間を待つ。雨降って地固まるじゃないけど、事件のお陰で仲良くなったと笑いあう。
東野だけは、このモンタージュのおかげで自分がどんな思いをしたか、そう言って詰った。本当だよ。彼にとんでもなく酷いことをしたのに、それを笑ったんだよ。コメディだから、そういうことを真剣に考えちゃ成立しないってことなのかな。よく分からなくなった。

感想、おもしろかったーと書こうとしたのにな。観終わった時にちょっぴりモヤっとしたことが、この文章を書いてみたらそればっかになっちゃった。
とにかく役者さんは達者な方ばっかりなのでそれを堪能できたのはよかった。東野役の方、初見だけど良かったな。

この日のアフタートークは田島くん、穂先くん、そしてゲストに玉置玲央くん。チケット買った後に決定したんだけど、これはラッキー！　3人ともリラックスしてお喋りを楽しんでいる風だったので、なんだかニヨニヨしてしまった。トークの内容はざっくり箇条書きにて。

・よその穂先を見るのがひさしぶりと玲央くん
・書類の捲り方で、古田の神経質そうな感じがよく出てた
・田島くんはこの座組で唯一ビジネスマンの経験あり、演出に生かせている
・みずほ銀行にお勤めのご友人に稽古を見てもらった
・ご友人と会うのが久々で、銀行員の喋り方、立ち居振る舞いになっていた
・ひとつ目標として。俳優が観たら「自分もコレ演りたい」と思われたい
・その上で「どう？」と問うと玲央くんは「そりゃムラムラするよ」
・やるとしたらぜったい東野。俺できるでしょ、と玲央くん
・柿喰う客の宣伝。『肉食獣』の公演期間があやふやな穂先くんw
・玉置玲央なしで埋まってる！に対し「もう俺いらないんだ」と拗ねてみせる玲央くん
・玲央くんは舞台は未定？　映像は来年の大河と劇場版『風よ、あらしよ』
・柿喰う客を観る人へ。アンケートに田島亮を見たいと書いて！
・客席から「おお～」というどよめき。柿に出たいのか･･･
・なぜserial numberには出ないのかね

俳優にとってはやりがいのある作品なのかな～。他の2作品はずっしりだったんで、差がすごいわ。いや、まだあと一作品あるか。それも楽しみ。