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『幸せな孤独な薔薇』シアターキューブリック

2021年5月26日(水)17時開演
@浅草九劇
¥4,700(前売)

例によって昨年中止になったのちに、延期ということで改めて今年上演となった作品。お蔵入りにならずホッとしたけど、まさかまる一年後でまだコロナ真っ盛りだとは思わなかったけど。

この演目は、田嶋ミラノさんのユニット“クチーナ・ミラノ”が21年前に上演したものの再演なのだ。アタシはその初演を観て感激し、当日券でリピート、普段は滅多に泣かないアタシが2回ともハンカチのお世話になった。その後そこそこな観劇クラスタとなりたくさんの舞台を観てきたアタシが、いま思い返しても胸が熱くなる作品なのだ。
それがなんと、再演! しかもオリジナルキャストの首藤さんが出演とあっては、見逃す訳にはいかない。昨年のチケットはキャンセルになったが、もちろん改めて取りなおした。

1年経ってもまだ世の中は落ち着いていないけれど、今回はなんとか上演されて良かった。
という訳で浅草は九劇へ。初めて伺う劇場だったけど、とても小さなコヤでちょっとびっくり。以前キューブリックさんの舞台を観たのはサザンシアターだったので。(確認したところ2011年5月の上演で、当時は震災でめちゃくちゃ大変だった頃。これもよく上演してくれたなあというタイミングよね・・・。そしてこの時も首藤さんの客演を観に行ったのでした)

公演は終了、配信のアーカイブ期間を終えているので、ネタバレ気にせずいきます。
例によってアタマワルイ感想ですし、しかもかなり21年前の公演に囚われておりますが、それでもよければドーゾ〜

ものがたり
留学を夢見る女学生ルカは、遠縁にあたる老人の存在を知る。郊外の屋敷に暮らすその老人はとても裕福なのだという。
ルカは自分の夢を叶えるため、友人のミサとこの屋敷を訪ねた。
留学の援助をお願いしたいが、自分はきれいでもないし、愛想も無い。自分の容姿にコンプレックスを抱える彼女は、ミサに身代わり役を頼んだのだった。
夏と呼ぶには少し早い季節の昼下がり、屋敷の中に案内された二人は、いよいよ老人との対面の時を迎える。
ところが、果たして二人を待ち受けていた老人は、盲目だったのである。
劇団公式サイトより

ああ、やはりとても良いお話だなあと改めて噛み締めたわ・・・。
とても小さい劇場だけど、装置も衣装も照明も丁寧にうつくしく作り込まれていてとても素敵だった。
21年も経っているのに観ているとあっという間に記憶が蘇って、再演ではあるけど今回の作品としては初見なのに妙に懐かしく感じる。

人嫌いのお金持ちの親戚、田舎の大きなお屋敷、閉め切った開かずの薔薇園。と来れば、バーネットの『秘密の花園』。母が好きだったらしく、こどもの頃に買ってもらって自分もド嵌りし何十回も読み返した本。しかも学校の図書室や地域の図書館にあったものを、訳者が違うバージョンで数冊は読んだというオタクっぷり。(やはりオタクはちびの頃からオタクなのだった)
そんなアタシが食い付かないはずがない。
初演当時には無かった言葉だけど、これはルッキズムの話でもある。ルッキズムに囚われているのは主人公のルカ、そしてエリカさん。実際の美醜より他人の評価ばかりを気にしたり、コンプレックスを持ってしまう。周囲の人々はそんな人種ではないというのに。

ガチガチに凝り固まったルカの心を解きほぐし、強くやさしく見守ってくれるミサとお屋敷の人たち。計画が成功し援助を受けられることより、自分が愛されていると知る喜びは無上のしあわせだろう。ものがたりの結末はわかっていても、清々しく胸を打つ。だから何度観てもおもしろいんだろうな。
特に「だんなさま」がエリカに告白するシーンは、少女漫画チックと笑わば笑え、恋をする(したことのある)乙女(いや男子でも)が全員目をハートにしてノックダウンするだろう。

いま書きながらドキドキうるうるしたけれど、目の裏に浮かぶのは21年前の映像だと気がついてしまった。
キューブリック版の『幸せな孤独な薔薇』ももちろんとても素敵ではあったけど、やはりアタシの中では初演の、特にミラノさんの印象が強すぎたみたい。
観劇後に辛抱たまらんくなって、帰宅後に古いDVDを掘り起こして初演の映像を全部観ちゃったもんね。そしてミラノさんの素晴らしさに改めて震えてしまった。

このブログを振り返ってみたら、初演の観劇時に記事を書いていなくて21年前の自分にツッコもうかとおもったけど、よく考えたらこのブログは2005年スタートだったわ。そりゃ残ってないはずだw
このブログの前身である日記サイトも、たしか2003年頃のスタートだった気がする・・・。
当時の感想が残ってないことを言い訳にしてココに書いちゃうけど、本当にすごい作品だったな、と。キューブリックの方がこれを上演したいとおもうのもよく判る。

ミラノさんの力も素晴らしいんだけれど、当時一番ノっていたキャラメルボックスが関わっていたのも大きんだろうな。演出は良い原作を上手に料理する成井さん(もうちょっとコメディ要素は控えめでお願いしたかったけど)、舞台美術や照明などスタッフも磐石。そしてキャストも最高。
大好きなカッコイイ首藤さんが老人役で最初はショックだったけど、準主役級とも言える役だったし。(ちょっとお茶目でカッコイイ「だんなさま」でした)
エリカの中村恵子さんはバッチリなキャスティングだし、ノバラのくんじさん、孫の菅野くんも当たり前の様に良かったなあ。

直近で観た舞台より遠い過去の話ばかりして申し訳ないが、私の中でのリアルな状況なのだ。年寄りは過去に生きている。
キューブリック版では、マイ贔屓の首藤さんはノバラ役。お茶目で可愛いオッサンでした。ラブリー♡
可愛いオッサンと言えば西川くんのだんなさまも良かった。脳梗塞以来、発語がスムーズでないのが気になっていたけど、老人役となれば違和感なもなく。キュートで魅力的なだんなさまであったことよ。
お若い方々も皆さん頑張ってましたね。特にミサが個人的には好きでした。
配信でも観ればよかったなあ。カメラを何台も使って、とてもうつくしい映像を作っていたという噂なので、リアルでとはまた違った良さがあったのかも。ディレイ配信とかがあればまた観てみたい。

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