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『おわたり』 タカハ劇団

2023年7月4日(火)
19時開演
@シアタートップス
¥5,500

かなり久しぶりのタカハさん。
『世界を終えるための、会議』以来かな? うっわ、10年ぶり。
今回は神農さんが客演ということでチケットを取った。何やらホラーらしいが、大丈夫かな・・・特に怖いのが苦手だと思ったことはないけど、そもそも舞台でホラーを観たことがあんまりないだけのような気がする。上川くんの『ウーマン・イン・ブラック』くらいかな~。これはめっっちゃ怖かった!

しがない非正規雇用、ほぼ最低賃金ワーカーなのでチケ代高騰はキビシイ。(時給は下がったのに!)なので今回も前半割で観ようと思ったんだけど、アフタートークに神農さんがお出になられるというので割引は諦めた・・・。そのかわり手数料は節約したぜ。みみっちくてすみません。

その夜は、 外を見てはいけない 人形を飾ってはいけない
背後から呼ぶ声に、ふりかえってはいけない

ある日突然、死んだ友人の幻影を見るようになった小説家、稔梨。
彼女は友人の民俗学者と共に、海沿いの小さな集落に住む霊能力者のもとを訪れる。
しかし彼女が尋ねたとき、集落は年に一度の祭『おわたり』の準備に大わらわだった。
『おわたり』とは、その年に海で死んだ者たちの魂がいっせいに黄泉の国へと渡ること。
死者と生者が混在するひと夜。 海は闇に溶け出し、人の秘密があふれ出す。

公式サイトより

<キャスト>
四方田 稔梨・・・早織
蝦草 紅雄・・・西尾友樹
斑鳩 亞紀・・・宇野愛海
阿部 翡翠・・・かんのひとみ
阿部 刹那・・・田中亨
堀口 光義・・・土屋佑壱
堀口寿々子・・・鈴政ゲン
常盤 純・・・神農直隆
柏野 貞広・・・猪俣三四郎

うーん、おもしろかった~~!
祟りとか儀式、因習とかの土俗ホラー、嫌いじゃないかも。民俗学とか好きだし。『八雲立つ』(古いまんが)とか好きだし。
んでもタカハ劇団てこういう作風だっけ? まあ2009年の『モロトフカクテル』と前述のアレと今回のコレしか観てないんだけども。
とはいえ特にホラーを求めていた訳ではないので、人間ドラマ部分がキチンとあったから楽しめたんだとおもう。たぶん。

ヒロインの稔梨が割と「いい人」じゃなかったので、アンハッピーな結末でも辛くないのがいい塩梅だったかもw
友人とはいえ仕事(フィールドワーク)に同行し、手伝いもせずチヤホヤされるだけ。自分が知りたい裕弥のことについては翡翠さんにグイグイ行くし。紅雄からの好意を知りつつそれには応えず、友人として頼ったり甘えたり。

そんな稔梨にベタ惚れで世話焼いたり気にかけたりの紅雄が、まったく報われなくて可哀想かわいいような気がしていた(公式からもダブルヒロインと言われていたし)。でも高羽さん曰く、紅雄も彼氏やパートナーにするには問題ありでは、と。結構人の発言遮りがちだし、行き当たりばったりの嘘をつくし、自分が一番稔梨のことわかってるマウントがすごい。稔梨の盗作を知らないふりしていたのも、結局彼女を追い詰めるだけだったのではないかと。

助手の亞紀ちゃんがいてくれたことがこの話の救いかな。この当時(1995年)にあっては先進的な考え方とプラスのパワーを持っていて、チャラついた口調だけど彼女の発言は気持ちが良い。ええ子や。きっと紅雄のこと、ほんのり好きだったりするんだろうな。
スズちゃんを助けるために禁忌を犯して外へ飛び出すのもめっちゃかっこいいし、デニムのお腹からビヤタン出して飲むところもなんか好き。(ビヤタンて一般的に通じる?)
(名前の亞の字は、十字架の意味をもって付けられたのだそう。なるほど~~)

刹那くんが裕弥に似て見えるのは稔梨だけなんだよね。そういう目で見てるから。
ひどい吃音なのが、死者の世界の話をする時は滑らかに喋るので、これは・・・とおもったらやはり。重なり合う生者と死者の世界をするっと行き来してるのは刹那くんなんじゃないかな。
クライマックスで、刹那くんがいろんな人(死者)を入れ替わり立ち替わり憑依させるんだけど、わざとらしい感じとか違和感とかなしに演じていた田中亨くん、かなり凄いのでは・・・? あのシーンは高羽さんは演出つけてなくて、彼にお任せだったらしい。すごいな。
名前は知ってるけど初見・・・とおもってた田中亨くんはキャラメルの『エンジェルボール』とナッポスの『ぼくのメジャースプーン』の2本も観てるじゃん。めっちゃスルーしてるわ・・・。でもこれで覚えた!

公金の使い込みを攻められ、安(実の息子)を絞殺してしまう光義。(ん? コレ再現フィルム的に安を田中くんが演っただけで、憑依とかじゃないのか? それとも・・・)演じるつっちー、めっちゃ久しぶりに拝見。前見た時は一応イケメン枠だったはずだけど、全時代的で高圧的な町議のオッサンでびっくり。でもって声デカw
貞弘が光義を射殺し、「瑠璃ちゃん、そこにいたんだ」と自分の頭を撃ち抜く。貞弘はずっと虐げられていて恨みもあっただろうけど、きっと瑠璃(刹那の母)がやったんだろうな。
序盤の貞弘と刹那、ふたりのシーンはどことなく淫雛な香りがした。刹那に瑠璃の面影を見てたんだろうけど、でも実際にあの時彼は刹那でなく瑠璃だったのかも。貞弘と瑠璃の関係も色々とあったんだろな~~と想像してしまう。

おわたりの禁忌で「人形を出してはいけない」ってのは、魂のない“容れ物”に何かが入り込むから。刹那は空っぽだと翡翠に言われたらしい。つまり憑坐(よりまし)か。
安の妻であるスズちゃんが「だめ! 入ってこないで、安さん」と叫び逃げ惑っていた。まだ空っぽな赤ちゃんに、何者かが入り込んでしまったんだろうか。亞紀ちゃんが彼女を連れて脱出したけど、お腹の赤ちゃんは大丈夫だったのかハラハラした。(結局どうだったかはわからなかった)

そして神農さん。彼目当てでこの舞台を観たんだけど、純がとんでもないクズでびっくりした~。アタシが観た中では『サイドウェイ』のジャックに並ぶくらいのクズ!
高羽さん曰く「本人は聖人の様にいい人」だそうで、役と中の人のギャップが面白いとか何とか。でも神農さんがいい人だって知らない人にはその面白みを味わえないのでは・・・? まあアタシはめっちゃ味わえましたがw
純が屋敷中を逃げ回って下手のドアを開けたら、同時に上手のドアが開くシーンがゾワっとした!(上手のドアを開ける手は猪俣さんだったそう)この霊障(?)では死んだ看護師もいただろうけど、生きていて純に弄ばれて恨みを持ってる生き霊とかもいそう。
でもって市松人形は最恐よ。『生き人形』とか『わたしの人形は良い人形』とか・・・思い出しただけでゾーーっとする!!
「せーんせ・・・わたしですわたし」と現れる刹那が、壊れた人形みたいな動きでめちゃくちゃ怖い。このシーンは暗転して終わったけど、純はとり殺されてしまったんだろうな・・・

そしてやっぱりというか、瑠璃は翡翠が呪い殺したのだという。瑠璃になった刹那が翡翠の首を絞める。瑠璃への憎悪を叫びながら絶命する翡翠。うっわ、やっぱやってたか。先祖の咎のためこの土地に縛られて、一生を犠牲にしたとも言えるかわいそうな人だけど。(大津波の時に阿部家の先祖は、金を盗られるのではと懸念して村人を締め出し、村が全滅。「おわたり」はその祟りを鎮めるための儀式なのだ)

ラスト。紅雄は「生きている人間のことを考えてくれ」と稔梨を引き止めるが、「紅雄はそうしてね」と刹那の方を「振り向いて」しまう。紅雄切ねえ・・・。
紅雄が去り、稔梨はやっと裕弥に会えたと語りかけるが、刹那に憑いていたのは・・・
稔梨は赤い花びらとなって消え去り、刹那は倒れ伏し、終幕。

うわーーー、稔梨助からなかったか!
こわおもしろかった~~!!

最後に刹那にとり憑いていたのは誰?っておもったら、あれか! 冒頭に稔梨が語ってた怪談だってことにしばらくして気づいた。(遅い)
“久しぶりに実家に帰って地元のデパートにいったら、プレイルームに子供のころ会ったのと同じ男の子がジッとこっちを見て「どうして来てくれなかったの、ずっと待ってたのに」と・・・”
あの子だったか。稔梨は「裕弥が見ている」と思ったけど、ただの思い込みで裕弥は1ミリも来てなかったってオチがすごい。盗作したから罪悪感もあるだろうし、裕弥のことを好きだったんだろうし、でも紅雄と亞紀ちゃんが言ってた通りなのが本当になんていうか、人間って・・・て感じ。紅雄のほうが裕弥をわかってるなあ。稔梨のことだけじゃなく。

この日はアフタートークあり。登壇者は以下の通り。
早織・土屋佑壱・神農直隆・高羽彩
ゲスト:うえまつそうさん
もちろん神農さんのお名前があったのを確認してこの回のチケットを取った。

うえまつさんというのはオカルト系YouTubeだそう。そのチャンネルで、実際にある「おわたり」に似た風習の話を高羽さんが発見し、ゲストに呼んだということらしい。
伊豆七島・新島の「海難法師」は、何と令和のいまも行われているというんだそう。めっちゃ怖い。(気になったら調べてみて)高羽さんのルーツも伊豆だそうで、もしかして昔に聞いたことがあったのかも・・・と。興味深い話を聞けておもしろかった。
うえまつさんからの質問。おわたりのラストシーンのように「親しい人から呼ばれたら振り返るか?」神農さん以外は全員振り返ると回答。へ~そっかああ。興味深い。

この芝居、なんだかずっと既視感あると思ったら『室温』と雰囲気が似てるのか。個人的な感覚かもだけど。あっちは因習じゃ無くて過去の犯罪だけど、じっとりとした昭和っぽいホラー。田舎にある地元名士のお屋敷、年に一度の祭り(命日)の日。警官が出てくるのまで一緒だ。まあこれは偶然か。
既視感で言えば、市松人形のところでちょっと触れたけど、山岸凉子感もすごい。死者の声を聞く祖母に無能と罵られた孫が、実は圧倒的な能力を持っていた話があったよね。結構まんまなのでは? あれ何て話だっけな・・・山岸先生の怖い話はマジ怖いのでおすすめ。

禁忌を最初に破った、あのオルゴール。シューベルトの野ばらに意味があったのかも、というどなたかの感想を読んで、歌詞は一番しか知らなかったので調べてみた。ふーんむ、なるほどね。稔梨の最後、あの赤い花びらは野ばらだったのかな。

そういや客入れSEがずっと大瀧詠一だったけど、何か意味があるのかな? 物語の設定は1995年だから大瀧詠一が流行った時代から10年くらい後だよねえ。
河合我聞とか、やたらたばこ吸ってたり、時代を感じる仕掛けかな。でもたばこの銘柄がハイライトなのはおっさんくさいな・・・。純はまあいいとして、紅雄とかは違うんじゃないかな~。亞紀ちゃんはメンソール系とか。

ホラーの舞台ってどんなだろ、楽しめるかなあとおもってたけど、なかなか良かった堪能した。
簡単にチャチャっと感想を書くつもりが、謎の長文に・・・。観劇から三週間も経つのに、時折思い出してはしつこく噛(しが)んでしまう。
後日配信されそうなので、もう一回観ちゃおうかな。


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