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『ブラウン管より愛をこめて ー宇宙人と異邦人ー』 劇団チョコレートケーキ

2023年7月10日(月)
19時開演
@シアタートラム
¥5,000

劇チョコは過去に一度だけ拝見して、とても良かったんだけどとても切なく悲しいお話だったので、自分がしんどい時には観る気力がなくて。そのまま数年経ってしまった。
今回は特撮ヒーローものをつくっているプロダクションが舞台だということで、ちょっと興味がわいて観ることにした。

1990年、バブル景気に沸く日本。
特撮ヒーローものを制作する会社の企画室。20代30代の若手クリエイター中心に番組の脚本会議が行われている。
少年時代に特撮巨大ヒーローのシリーズに熱中した経験のある彼らは、自分たちの仕事が所詮は過去の名作の焼き直しに過ぎないことに忸怩たるもの感じながらも、半ば先行の名作の後追いになるのは仕方ないとあきらめている。
そこには、本来は大人向けの番組を作りたいという屈折した思いもある。
そんな覇気のない会議の中で、一人の脚本家があるシリーズで放送された異色エピソードを話題にする…

公式サイトより

少年時代に熱中したという『ユーバーマン』の元ネタが、円谷プロのウルトラマンシリーズだというのはすぐわかる。
劇中、東京特撮プロのスタッフたちが「ユーバーマン○話のエピソードが~」などと熱く語るシーンは、いかにもオタクらしくてむずがゆいというか、苦笑いしてしまう。アタシの旧友たちは特撮オタクも多かったのでw(東特プロが制作している番組は『ワンダーマン』)
ヒーローものなんて劇チョコぽくないなと思ったけれど、観てみたらやっぱりなんていうか、劇チョコだった。

経費削減のため怪獣の出てこない話をつくることになり、脚本家は「人間に差別される宇宙人の話」を書くが上司からはNGがでてしまう・・・という展開。あらすじにあった異色ストーリーというのは元ネタがあって、『帰ってきたウルトラマン』の第33話『怪獣使いと少年』だという。
気になって後日どういうストーリーか調べてしまった。もちろんアレンジはされていたけど、パン屋の娘が「パンを売るだけよ、だってうちパン屋だもん」という件りはそのままだった。でも差別についての表現は『ワンダーマン』よりかなり過激だったようで。昭和のヒーローものすごい・・・

『怪獣使いと少年』では差別は良くないからやめましょうってな説教くさい話ではなく、ちゃんとエンタメ作品になっていたと思う。
差別する側は差別している自覚がないことも多い。悪意がない差別こそ無自覚で気づきにくい。差別は未知なものに対する恐怖心から起こること。人種や国籍だけでなく、性差や性的嗜好など、差別はたくさんある。自分の考え方や行動について、一歩ひいて考えてみるいい機会かもな・・・などと。
まあちょっと風呂敷ひろげちゃってちょっと散漫な感じもするけど。

しかし1990年て大学の後輩呼びつけてそのままカンヅメとか、大丈夫な時代だったっけ? アタシはたぶん、古田さんと同年代くらい? 友だちがアニメの制作進行やっててとんでもない時間に仕事してたけど、あれは80年代だったかなあ。思い出せない。

そうなんです。
ユーバーマン、いえウルトラマンめっちゃ世代なので、あのちょっとダークでシニカルな感じ、懐かしくて。『怪獣使い~』を当時見たかどうかは記憶が定かではないけど、あのシリーズ全体を覆う湿気を含んだシリアスさやシュール感を思い出す。結構攻めた話もちょいちょいあった記憶。(ウルトラマンシリーズもタロウ以降はわりと明るくなった感。80以降は未見)
パン屋の娘役を演じた女優さんの役名(ややこしい)が森田あんなだったけど、ウルトラセブンのアンヌ隊員から来てる? 違うかな・・・

舞台美術もよかった。上手と下手にそれぞれ別の部屋があって、その中央に町のジオラマ設えてあった。場面によって灯りがともったり、照明で変化するのがおもしろくて美しかったなあ。舞台自体の背景に星が出た時の、夜景の感じが印象的だった。

チケットを買うときに、お安い前半割りかアフターアクト付きか迷ったのよね。アフター「トーク」はよくあるけど、アクトってめずらしいよね。役者さん大変だな。
結局、岡本さんのアクトの回にした。ラーメンの出前をとる話、オチが途中で見えちゃったけど、でもふふっとなる話でよかった。

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