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『しびれ雲』 KERA・MAP #010

2022年11月29日(火)13時開演
@本多劇場
¥8,500

ケラさんの作品は『世界は笑う』に続いて、こちらも中止公演に当たってしまった。『世界は笑う』の方はミスで2公演分チケットを購入してしまい、そのおかげで助かったんだけど。
今回は唯一のチケットが消えたので買いなおそうとしたけど、すでに売り切れてるじゃないですか。今回は諦めるか~と思っていたら、なんと追加公演が! 発売日に勢い込んでポチったら、すっごい前の方の席が取れてしまったあ。ちょっと前すぎるw 舞台奥が見えにくいんだよーん。推しが出てたらそれも嬉しいんだけどねえ。
まあ贅沢言ってもキリない、見られるだけでありがたい。

ナイロンは割と昔から観ていたし、ケラさんの作品は好きなんだけど、なぜかKERA・MAPはスルーしてたのよね。なんでだろ。アタシが最初に観たのは8本目の『修道女たち』。そこからは続けて観ている。最初っから観ておけばよかったな~。
さて、今回はケラさんらしからぬ緩やかで穏やかなお話。尖ってもいないし皮肉も毒もない。事件も起きない日常を淡々と描く、まるで小津映画の如く。てことをケラさん自身が言っていたけど、それってどんなんだろ?って思ってたけど、観てみたらたしかにそんな作品になっていた。いやそうはならんだろケラさんだしって思っててスミマセン。それでもやはりケラさんっぽさはしっかりあるのがおもしろいんだなあ。

※ネタバレしていますのでご注意

「はじまり」
昭和十年(一九三五年)頃。
海に囲まれた、三つの村から成る孤島「梟島」。
そのひとつの村の海辺近くに、いくつかの家がある。
秋の日の午前。
石持国男の七回忌の法事を前に、
未亡人である波子、波子の妹の千夏らが慌ただしくしていた。
穏やかな波の音に交じって、呻き声が聞こえる。
ケガをしている男が倒れていた。
男を見つけた千夏と夫の文吉は介抱し、
法事が行われている波子の家に連れていく。
名前も年齢も、どこから来たのかもわからないというその男に、
波子はフジオと名づけた。

公演パンフレットより

9本目の『キネマと恋人』(面白かった!!)の舞台だった、昭和10年頃の「梟島」という架空の島。
独特の訛りがおもしろ可愛らしくて、観た人はつい訛ってしまいがちw 「ばりんこ」「ありがとさん」「ごめんちゃい」とか、動詞に「~くさる」、語尾には「だり」「がっさ」をつけてしまうのだ。
そんなかわらしいい言葉で話す島民たちもまたチャーミング。
事件も起きないと言っても、記憶喪失の見知らぬ男が現れるというのは大事件だ。でも身元のわからない男を受け入れた後は、夫婦喧嘩だったり亡き父の恋文?が見つかったり、おじいさんがボケてしまったり、お坊さんが木魚を放置して蓄電したり。当事者にとってはまあまあ大変なことでも、物語としては淡々と。

最後まで見終わって、本当に「悪い人いない!」「普通の日々だ!」と感動??
こんなに静かな話でもおもしろいんだなあ。小さな人々の日常ってドラマなのかもなあ。キャラクターが魅力的だからかなあ。どの役者さんもみな素敵であった。

アタシの大好きな緒川たまきさん、否応無しのすばらしさ。前作はロマンティックコメディのヒロインだけど、今度は21歳の娘を持つ母・波子。けれどもなんと魅力的な女性でしょう。鈴を振る様な声、うつくしい立居振る舞い。惚れ惚れしちゃう。
波子の妹・千夏と文吉(ともさかりえ・萩原聖人)はお互いベタ惚れなのにこどもっぽ過ぎて喧嘩の絶えない夫婦。かわいらしいけどちょっと騒々しいw
波子の娘・冨子(富田望生)も、ご近所さんのやよい(清水葉月)もとにかく生き生きとしてかわいらしい。

群像劇だけど、一応主役はフジオ(井上芳雄)かな。記憶喪失の青年。どうやら入水自殺未遂の末に怪我をして記憶を失ったらしい。どうやら東京ではとんでもなくすごい人らしいが、物語の中では明かされず、真相を記したレポートを読まずに海へとばら撒くラストシーンに(そうだろうなあ)としみじみした。死にたくなるようなこれまでの人生よりも、梟島での新しい自分を選んだフジオ。そうだろな、でもきっと勇気が要っただろうなあ。最後の清々とした笑顔がよかった。

しびれ雲とは、変わった形の雲で、この雲が出ると運命?の潮目が変わるという言い伝えがあるのだという。
フジオが現れた日と、彼が書類を捨てた日にしびれ雲が見えた、ということは・・・。

今回はいいかな、と思ったパンフも結局買ってしまった。ここんちのパンフは読み応えあって毎回良いんだもん。中身のない(読むとこない)写真だけのペラいパンフだとガッカリするよね。
いま半分くらいまで読んで、「こんなに読んだのにまだ半分もある!」とウキウキしてるw
読み終わってまた思うところがあったら追記するかも。しないかも。
来年はナイロン本公演もまた楽しみ。みのすけさん、久しく拝見してないので渇望。しかしあまり不条理すぎると消化不良を起こすので、お手柔らかにと願うばかり。

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