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kWh=¥ (キロワットアワー・イズ・マネー) 〜エネルギーと快適な生活を考えてみた〜

築45年の木造住宅で感じたこと


都心のマンションから東京郊外の築45年の木造住宅である実家に戻ったのが2021年4月。この家、外気温の変化をまともに受ける。5月でも気温が上がると暑いし、エアコンなしで快適な秋は短く、この冬は底冷えとの格闘の日々だった。

これまでの何度かの引っ越しで、ガタガタサッシの隙間風に悩んだこともあったが、基本的には建物の断熱なんて考えたこともなかった。だが、この1年は我が家の強烈なまでのペラペラさを思い知らされた1年だった。

毎日犬とお散歩しながら周囲の住宅を観察してみると、比較的新しそうな住宅は彫りが深いことに気づく。窓の枠がとても分厚いのだ。最初は理由がわからなかったのだが、この正体、さては断熱材?と気づくようになった。

Voicyで建築家の竹内昌義さんの『断熱教室』という番組を聴くようになったのだが、これが今の私の関心事にピッタリとはまって面白い。

https://voicy.jp/channel/2817

ここで紹介されていた『kWh=¥ キロワットアワー・イズ・マネー』を読んでみた。

地方創生とエネルギー

この本、タイトルから想像していたのは、数式を多用した省エネルギーや売電の話だった。が、帯に「地方創生」と大きく描かれているように、日本の人口減少の現実から始まり、消費財やサービスだけでなくエネルギーも大手資本からではなく地産地消することでお金を地域で循環させることの大切さと事例やアイディアが書かれている。

コロナ禍では、人の動きが制限され、苦しんでいた地元の商店に少しでもお金を落として地域の経済活動を守ろうという動きがあった。まさにそれと同じなのだが、この本は2014年に書かれている。コロナ禍という想定外の有事だからではなく、そもそも日本の人口減少は、内閣府も「人口急減」という言葉を使うほどの、想定された有事なのだ。その現実を見据えて、エネルギー問題の地産地消が地方創生を支えるという構図で説明されている。

エネルギーの地産地消という言葉は最近聴くようになったが、そもそも「〇〇電力」のような大手に電気代を払っていれば、その利益はその会社に吸い上げられる。もちろん地域にも「〇〇電力」の支店に社員がいてお給料は払われているだろうけれど、地域へのインパクトは大きくはないだろう。この視点、今までの私にはなかった。。

日本はなぜ変われないんだろう?


著者がドイツ在住であることもあって、ドイツではいかに省エネの住宅改修が進められてきたか、成功事例やアイディアがいくつも紹介されている。ドイツは、南端で北海道と同じぐらいの緯度だし、当然寒い。もともとエネルギーのロシア依存度が高く、将来予測されるエネルギー高騰に備えるためにも、「エネルギー自立」を目指して策が講じられてきた。

では、我が国ニッポンは?

最近、何かにつけて、日本人て本当に「変わる」のが嫌いな国民なんだなあと思うことが多いが、ここでも、なぜ日本は変われないんだろうか?と考えてみた。以下、全く私的で感覚的な仮説を立ててみた。

①『我慢が美徳』文化仮説

変化が嫌いで、最後の最後まで我慢して変化を拒み、その環境を受け入れてしまう。そして本当の最後に一発逆転を狙うという国民性があるのでは? 省エネの観点で一発逆転が何を意味するのかは不明だが、とにかく我慢する。ドイツでは基本的人権として刑務所のトイレも19度を下回ることがないそうだ。

日本なら、冬の朝は布団から出るのに勇気がいるし、トイレは1日中寒い。廊下や階段は部屋という居住空間から切り離されているので、寒いし暑い。勉強部屋では手がかじかんだ。(今ではそんなことはないかも)我慢というよりも、それを回避する手立てがわからなかっただけかもしれないが、とにかくそれに耐えるしかなかった。

我が家には、激しい底冷え対策に、カーペット、ホットカーペット、キルティングのマットという3重構造の部屋があった。2枚目をめくった、その下にもう1枚発見した時は、さすがに驚いた。1番下の床に接していたカーペットは裏面が劣化して、部分的に床に張り付き、撤去には往生した。撤去すれば、当然寒い。でも、やっぱりおかしいよね。

② 季節の機微を大切にする文化仮説

10年ほど前、着物の着付け教室に通っていて、服飾の歴史のような講座があった。昔の人たちは、季節の機微をほんの少し先取りして着物やしつらえに取り入れることを粋としていたそうだ。教室で教えられていたほど、当時は暦に厳格だったのかどうかは疑問がなくもないが、実際の気温が高くても低くても暦を優先する。だから肌寒いのに薄着だったり、汗をかいても袷の着物を着る。真夏、現代とは気温が違っているはずだが、背中を汗が伝っても涼しげな表情で。冬は、まだ麻が主流だった時代は、何枚も重ねるかドテラ。ヤセ我慢という言葉もあるじゃないか。

季節の機微に敏感でいるためには、外界を遮断するわけにはいかないだろう。とはいえ、現代の生活は外界に完全にオープンでいるわけにもいかないから、最低限で。粋でいるためには我慢が必要なのだ。いかがだろうか。。。。。

私が考える省エネ住宅と断熱

経済も文化も大事。でも最も大事なのは、心地いい空間のため、ということ。つまり、健康な生活の基本。家が心地よくなければ、外でストレスを受けて帰ってくるのに、全く癒されない。家計を圧迫する高コストや不快な環境への我慢は、健康に与える影響は大きい。
断熱で心地いい空間を作り、出費に見合う効果を維持しつつ、環境問題も自分ごととして考える。

今日、ひょんなことから素敵なカフェに出会った。まさに地元の方の家族経営で、お客さんもほとんどが家族単位。お店の方たちへの挨拶がとてもやさしい。ここでこの本を読みながら、地元の経済の循環にほんの少し寄与した、とてもいい気分になった。


これから少し心地いい住まいのことを考えていきたいと思う。

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