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プロダクトを言語化し、計測できているか?初めて作るUXメトリクス

こちらは Product Manager Advent Calendar 2019 の1日目の記事です。

1. 計測が目的化してしまってないか?

 プロダクトを定義する際には以下のように様々な手法が開発されています。
 ・リーン・キャンバスなどの様々なキャンバス
 ・カスタマー・ジャーニー・マップ
 ・ユーザーストーリーマッピング
 ・サービス・ブループリント,  etc

 プロダクトを言語化するという点では、例えばリーン・キャンバスの課題、価値、指標などで表現できます。ただ、ざっくりしすぎていて、いざ実務に落とそうとすると困りがちです。そしてキャンバスごと放置されていたり…

 深く考えずに新規ユーザー数、リテンション、チャーンなどのようなメトリクスを使っていませんか?これらは強力ですが、プロダクトごとに価値は様々なのに、メトリクスが似たり寄ったりというのはちょっと違和感がありませんか?もしかしたら計測が目的化してしまっているかもしれません。

 計測はあくまで手段です。各メトリクスはプロダクトにとって何を意味するのでしょうか?

 今回の記事では、KPIなどの計測が目的化しないための、プロダクトの言語化からメトリクスを作る方法について記述します。

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2. 初めてのUXメトリクス:HEARTフレームワーク

 UXメトリクスという言葉はあまり聞いたことがないかもしれません。しかし、ユーザー・エクスペリエンス視点でプロダクトを言語化し定量化する際に非常に強力なツールとなります。また、UXメトリクスという言葉の通り、ユーザー視点で考えることが大きなポイントです。

 今回紹介したいのは『HEART Framework(ハート・フレームワーク)』です。Kerry Roddenら(当時Googleのリサーチチーム)によって開発されたHEARTフレームワークです。Kerryの記事はこちらです。

 HEARTとはそれぞれ、Happiness、Engagement、Adoption、Retention、Task Success を意味します(それぞれの意味は後述)。

 ポイントは、それぞれのHEARTに対して、Goals - Signals - Metrics の順で定義することです。ゴールとシグナルを言語化し、メトリクスによりシグナルを定量化します。

Goals(ゴール): 目指すべき理想の状態
Signals(シグナル): ゴールに伴い現れてくるユーザーの行動や態度
Metrics(メトリクス): シグナルを定量化したもの

 もう1つのポイントは、HEARTをプロダクト視点、機能ごとの視点で階層的に作ることです。

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HEARTによるUXメトリクスの階層構造

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 2-1. Happiness(ハピネス)

 定義:
 ① サーベイなどで得られる、ユーザーのプロダクトに対する態度や評価
 ② プロダクトによってユーザーの課題が解決された状態、もしくは、あるべき理想の状態(筆者追加)

 Kerryらの定義は①だけですが、プロダクトの価値を言語化するという点では②の方が重要です。

 例:
 NPS、満足度、使いやすさ、etc.

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 2-2. Engagement(エンゲージメント)

 定義:
 ユーザーのプロダクトに対する、熱心さ・意欲・モチベーション・使い倒し度合い

 例:
 1ユーザーあたりの1日の利用数、アップロードした写真数、メッセージ数、etc.

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 2-3. Adoption(アダプション)

 定義:
 プロダクトの新規ユーザーや機能を新たに使い始めたユーザー、復帰したユーザー

 例:
 一週間の新規ユーザー数、復帰したユーザー数、Gmailでラベルを使っているユーザー数(機能レベルのHEART)

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 2-4. Retention(リテンション)

定義:
既存ユーザーがプロダクトに戻ってきていること、使い続けていること

例:
一定期間でのアクティブユーザー数、チャーン

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 2-5. Task Success(タスク・サクセス)

定義:
プロダクトの機能の達成度合いを示すもの。効率性、有効性、エラー率など。

例:
起動速度、検索速度、サーチや画像アップロードの達成するまでの時間、達成率

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3. ケース・スタディ

 ここでは、米国スタートアップの買い物代行サービスである『Instacart(インスタカート)』を例に、HEARTごとにゴール、シグナル、メトリクスを見ていきましょう。なお、想像して作成しているので実際にどのようなKPIを使っているかは不明です。あしからず…。なお、メトリクスは、コホート分析しやすい指標にすることをお勧めします。

Happiness(ハピネス)
 Goals 買い物が楽になる
 Signals 重いものを頼む、ショップまでの距離が遠い、天候が悪いと頼みがち、など
 Metrics 重量、距離、天気・気温
Engagement(エンゲージメント)
 Goals どんなものでも使う
 Signals ほとんどの買い物でインスタカートを使う 
 Metrics 1ヶ月の買い物金額、利用するショップの種類、など
Adoption(アダプション)
 Goals ユーザーが殺到する
 Signals 新規ユーザーが急増する
 Metrics 新規ユーザー数、対前月比、YoY、など
Retention(リテンション)
 Goals ないと困る
 Signals 毎回利用する
 Metrics 3, 7, 15, 30 リテンション・レート、チャーン・レート、パワーユーザーカーブ など
Task Success(タスク・サクセス)
 Goals 
すぐに届けてくれる。確実に届けてくれる 
 Signals 注文から配達まで速い、ミスが少ない
 Metics 配達までの所要時間、購入ミス率、クレーム数 など

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4. まとめ

 メトリクスを作って計測することは大切ですが、それぞれに意味を持たせるためにも、まずはプロダクトの価値をUXメトリクスで言語化し、その上でそれを示すメトリクスを作っていくことで、プロダクトごとの特性に応じた定量化になるはずです。

 なお、HEARTの中でも特に重要であり、作るのが難しいのが Happiness です。顧客の課題とあるべき姿を正確に捉えることが前提になるからです。

 また、HEARTも仮説検証を通じて、定義を含めてアップデートしていくことも大切であり、最初に作ったものにこだわる必要はありません。

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去年の Product Manager Advent Calendar 2018 ではPRDに関する記事を書いています。



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