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カウチとポテトとフェイクフレーバー

「俺の真の情報か?欲しけりゃくれてやる、全てをそこに置いてきた。」

世の中はまさに大メディア時代!何もかもそれっぽさで溢れていて、正しさなんてそれらしさですぐ埋もれていく。正しそうな気がするツイート、正しそうな気がする記事、正しそうな気がする画像。面白ければ道徳や法なんて関係ないと笑う豪傑も馬鹿騒ぎ。常にハレの日、ケなどない!!!そんな世界をばかばかしいと嘲る人も、カフェインと合成甘味料、合成着色料でそれっぽい味がする無果汁のフルーツジュースを飲み、光が明滅を繰り返す薄い板を眺めていた。もはや誰だってそうなのだった。朝は、それらしい味と香りが食欲を引き立てる、蟻も食わないマーガリンをこれでもかというくらいショートニングが混ぜられたパンにつける。簡単に使い捨てられる命が生んだありがたみのない卵を貴重なミネラルウォーターで茹でて食べる。テレビはまたつまらない三文芝居を垂れ流している。ニュースとドラマももはや区別がつかない。健康的な食事を摂ったところで、夕方までゲームをする。このゲームは確率の低いレアなアイテムを入手するために何度も何度も課金しては同じステージを周回する。たまに、つまらないフリーのBGMと女性がやたら早口で捲し立てる音声と共に流れるグロテスクな画像が映る広告を眺める。夕方にはこれまた無意味に浪費されるありがたみのない無駄な命が、肉として皿の上に転がる。そこに色々な保存料や着色料を混ぜられしっかりと加工された調味料を素材の味がなくなるまでかけて、写真を撮る。半分まで食べたところでゴミ箱に捨てる。それから夜が明けるまでカウチに寝転がって、じゃがいもにバターを塗りたくって食べながらずっとyoutubeとtiktokで30秒にも満たないつまらない動画を延々と見続ける。そして朝が来る前に寝る。子供の頃は、未来は何が訪れるのだろうとワクワクしていた。自分の望んだ未来なんて来るはずがそうそうないのに。ネコ型ロボットも人型の空飛ぶ少年ロボットもいない。服なんてTシャツにジーンズで十分。流行りの髪型もめんどくさいからしない。というか身だしなみを気遣う金がない。なにもかも面倒だった。子供の頃好きだった、ちびくろさんぼという本。今はもう存在しないらしい。復刊したのかな?いや、調べてないから知らんけどさ。とにかくその本には、喧嘩を始めては同じ場所を回り回って、回り続けたら溶けてバターになってしまった虎がいた。多分、俺も喧嘩する相手がいないだけの虎だ。同調して、いつかドロドロに溶けて、誰かがパンケーキに塗って、余すとこなく食べてくれるのを待っている。そういう無意味な希死念慮に頭の中を絆されていた。


おまけ

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