雨と

 眠れそうだと思った夜ほど、上手くは眠れないものだ。許せないことはいっぱいあるほうが一緒にいる理由になる。そう君は言ったけど、僕には少し難しかった。

雨の音が聞こえた。暗い部屋に響いた。寂しくなる前に、君のことを思い出した。そして、とても寂しくなった。僕が僕として生きていくことは、これほどまでに難しいのか。君の言葉と同じくらい難しい。どちらも嫌いじゃないし寧ろ好きだけど、難しくて逃げ出したくなる。

 君の名前を忘れてしまったとか言って、感傷に浸ってみたかった。だけどそんなに薄情にはなれなかった。だけど、そんなに強欲にもなれなかった。嘘をつかないのは当たり前で、それだけでは本当を言ったことにはならないと、知ってはいた筈なんだけど。僕は僕を恥じて、僕は僕に失望したけど、僕は僕を嫌えない。それに君のことだって好きなままだ。明日もどうせまた雨だと、わかっているから別にいい。

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