帰依ない

 もう二度と会えなくても幸せでいてほしい人も、自分の命よりも価値があると思える人も、あの頃の癒しだったなと思える人もいる。それなのに自分を不幸だと思うのは、この星に生まれてきたことを否定してしまうみたいで悔しい。だからといっていつもの強がりで、幸福を言い聞かせたって胸はただ軋む。

 先週どころか、昨日みたテレビドラマの内容も覚えていなくて、読んだ本は中身を理解できずに都合よく咀嚼しただけの搾取。眠気に身を任せても眠れないから、感情もバカだとしか思えなくて、全部誤魔化して生きてきたけれど、それさえも生活と呼ぶらしい。

 好きだったあの人にはもう二度と会いたくなくて、会えなくて、寂しいけれど、嬉しい。矛盾ではないし、ただ切なさに浸りたい訳でもない。過去の自分を愛したい訳でもない。ただあなたが幸せでいてくれたらいいなと純粋に思っている。きっとそう。だから会いたくない。

 返したくない相手に愛を返す心遣いも、返したい相手に裏を返してあげる気遣いも、どちらも無駄だったのかしら。それなら何のために生きてきたのかしら。

 また訳のわからない話ばかりして、こんなの物語でも本当でもなくって、自分の真実なんて何よりもずっとわかり得ないから、この感覚さえも嘘であるといい。

 また訳のわからないことばかり言って、あなたってあなたのことよ?とか誑かすのもジョークで、笑ってくれなんて言えないけど、泣かないでよとも言わないから。

 何も信じられなくなったあの日にも、やはり信じ続けたいと願ったように、死に際はいつもみえたままで綺麗で、決してまだ私に近づこうとはしなかった。だから、生きてきた。だから、生きている。訳のわからないこんな一日もそこから間延びした半永久も、きっと愛してしまうのでしょう。どうせ愛してしまえるのでしょう、私。

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