理由なんて

 空が青いから人を殺したいと思ってしまいました。空があまりにも青いから、私は誰かを殺めたいと思ったのです。もしも後少しばかり陰っていたなら、私はこうも醜くならずに済んだのかもしれません。雨の匂いどころか、雲の気配さえここにはないから、この世界は甚だ救いようがなくて、死んでしまえたらいいなあと思えてしまったのです。殺意を謝って許されたと錯覚して二酸化炭素を吐き続けるくらいなら、いっそ殺して楽になりたい、いっそ刺されて血に塗れたいと、思ったのです。思ったけれど、空はあまりにも青いままなので、祈りを捧げることもなく日は暮れてしまうでしょう。私は生きたまんまで、虫一匹さえ故意に殺せないのです。いっそ行き耐えて償いを、なんて、馬鹿馬鹿しくてならないでしょう。ただ私は、暗い場所に沈みたいのです。それくらいが、叶う世界が欲しいだけなのでした。

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