UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Thank you, ROCK BAND! (1/3)

 UNISON SQUARE GARDEN バンド人生15年目にして初めてのアニバーサリーイヤー、今年が遂に終わろうとしている。私の手元にはただならぬ気配を漂わせる本と、舞洲でのライブの映像が届いた。序でに届いたのが来年の自主企画ライブツアーの知らせのみならず年末のワンマンライブの情報もセットである辺り、やはり彼らはライブ生命体という名の変態だ。

 さて、タイトルに挙げたスペシャルブックを読んだ。折角なので自分の観た今年のライブや観ていないライブのことまでお話していこうと思う。個人的な話や都合のいい解釈、それに知っている範囲の情報を挟みつつの語りである。

 スペシャルブックを手に取ると、表紙カバーにはUのロゴの形に切り取られたライブ写真が並ぶ。彼らのライブにはよくカメラマンの姿が見られる。この、ライブにフォーカスを当てた本も、パラパラと捲ってみると写真がふんだんに盛り込まれている。あれだけライブで動いていて、それなのに、いやそれだからこそ写真からも躍動感が見て取れるのがこのバンドのライブ写真の特徴だ。これだけの数の写真を入れ込んでも野暮ったく見えないのは彼らのライブ写真を見慣れているから当たり前のように思えるが、他の30代そこらのロックバンドだとダサくなる可能性もあるだろう。そんなことを考えつつ、高揚感を隠し切れないままに本を開く。表紙は例の平和過ぎるアーティスト写真だ。改めて、15周年おめでとう、ございます。

 まずは、5月、6月に名古屋で行われた自主企画ライブ、“fun time HOLIDAY 7”の特集。彼らが今まで対バンに踏み出さなかった3組(というかソロアーティストたちなので3人である)との共演について。

 彼らのライブを語るうえで素通りすることのできないセットリストの話をする。5月13日、ゲストはイズミカワソラ。彼女とユニゾンが対バンするにあたり、ただでさえやるべき曲は幾つもある。彼女の楽曲、”等身大の地球儀”からタイトルを拝借した、“等身大の地球”。トリビュート盤でカバーしてもらう、“ガリレオのショーケース”。後一つは正解を見てこそ確信できる企みではあるが、アンコールで披露された、“サイボーグ99%”(彼女のトリビュート盤でユニゾンがカバーした楽曲)。これらを演奏することがこのバンドが満を持して彼女を企画に招いた誠意であり答だ。更にこのライブには彼らのトリビュートアルバムの映像特典の企画も絡んでいる。それは、“流星行路”(1stデモ音源の表題曲)~“Catch up, latency”(このライブ当時の最新シングル)、つまり一番古い曲で始めて一番新しい曲で終わるセットリストでライブをするという企画。そんなドキュメントを提案するプロデューサーも相当な物好きだが、それに応える演出家田淵も相当な変わり者だ。だってその課題を楽しんでいるのだから。「セトリのことを人一倍考えているからこそ」セットリストの天才でいられる田淵は、この難解な課題をもぶち解いてこの日もフロアを沸かせたようだ。

 片思い的に勝手にSEとして使っていた“絵の具”のシンガーソングライター、イズミカワソラとのどこか温かい共演を果たした翌日の5月14日。この日ユニゾンと同じステージに立ったのは、斎藤・田淵の高校の後輩という間柄でお馴染みの、いや、AAAというグループに所属しているが、表現の幅をグループでの活動のみに留めずチャレンジを続ける男、SKY-HYだ。この日のライブは私も観たのだが、先に述べた”ユニゾンと同じステージ”という言葉が物理的意味しか成さないとキッパリ言えるほど、彼の提案するエンターテイメントショウとユニゾンの体現するエンターテイメントは異なっていた。それは、「あのライブを見て楽しくない人、逆にいるの?」と斎藤に言わせるほどの力でもあった。そしてSKY-HYはユニゾンに所縁のある曲をこの日一曲も披露しなかった。それは、次を待ち望む彼なりのエンターテイメントの形らしかった。ユニゾンがアンコール一曲目で披露したのは、トリビュートでSKY-HYがカバーする楽曲、”蒙昧termination”。確かにこの時に本家を確認していなかったら、原曲を忘れてしまっていたに違いない。そう思わせるほど、今手元にある音源のSKY-HYの”蒙昧~”は彼であることと先輩バンドへのリスペクトに満ちていて、その芯のある歪なアレンジは聴く度に私たちの心を弄んでくれる。

 そして6月19日、Zepp Nagoya。この日の対バン相手はLiSA。私は彼女に詳しくはないしライブも観たことがないのだが、どうやら彼女、只者ではないらしい。「ユニゾンは自分たちのためにライブをやっているが、LiSAは言うならば真逆のスタイルで、客が楽しんでくれるライブをやることを第一に考えているエンターテイナーだ。」という趣旨の発言を田淵がしていたことからも見て取れるように、バンドと歌手という肩書きの差だけではなく、根本的な土台が彼女とユニゾンでは違う。ユニゾンが15年かけて築いた基盤に負けないくらいの、全く別な形の土台を彼女は築いている。ユニゾンもまだ物語の途中であるように彼女もまだ色々な夢の途中なのかもしれない。それでも、ユニゾンのメンバーやファンを圧倒するくらいの煌めきを彼女はもっている。それは、田淵の提供曲をこのライブで存分に歌い切ったということからも伝わる、彼女の、客に対する直向きさに所以するものなのだろう。LiSAはいつもキラキラしていて、歌も彼女の表情を全身に纏っている。そんな、愛らしくて強がりで、誰よりも強い少女がLiSAなのだ。

 続いて、15周年の目玉企画。“PROGRAM 15th”と銘打った、大阪・舞洲スポーツアイランドでの大型野外ライブの特集。メンバー各々に抱えていた思いはあっただろうが、セトリを1年間考え続けた、いわば言い出しっぺの田淵がこの日に対してもっていた責任は今までにないくらい大きなものだっただろう。普段、「君の街に行くから来たければ来ればいい」というスタンスを貫いて生きている彼が、「(大阪まで)来い」と全国のファンたちに呼びかけ、全国から人が集まれる場所、交通手段まで確保したのだから無理もない。いつもは、自由にやるから自由にみろ!という態度の彼らがファンたちに責任のようなものを課したのだから、張本人の感じる責任は計り知れないほどに膨れていたのだろう。ということが明確にわかったのは田淵が後日談として自白していたからである。それでも、15周年、記念ライブへの彼の思い入れはもう今年が始まる頃には溢れて返っていた。ひたすらに、バンドや音楽、ロックンロールのもつ唯一無二の魅力を信じて愛し続けてきた彼が、ユニゾンというバンドを続けてきたこと。それはユニゾンのファンを5000日以上続けてきたということでもある。そんな彼が企画した一世一代のイベントが、大成功しなくてどうする?どうしようもないくらいかっこよくなくてどうする?客への責任も果たせなくてどうする?と。彼は自作の超難問の答をずっと考え続けていたのだろう。

そしてその答があのライブである。

物好きたちの描いた大きいだけの赤い円が無数に重なって、花マルになった。それが夏の夜空に打ちあがり、大きな音を立てて光の花を咲かせた。” Thank You 15th Anniversary!” ““See You Next Live! ”” 15の祝砲の後にスクリーンに照らし出された横文字はあまりにもいつも通りの彼ら過ぎて、さっきまで、「ロックバンド最高!」と体が叫び続けていたことも忘れ、ただニヤニヤと、音も立てずに笑ったのだった。見回すと、昂った感情の処理も疎かに顔を緩ませる物好きたち。いつものライブ会場と同じ光景と少しだけ高い夏の温度が、莫迦広い野外特設会場をいつまでも漂っていた。

(さて、読んでくれた人、いたならばありがとう。トリビュートライブの話まで縺れ込めなかったので、そちらはまた次に書くね。後、舞洲の映像を観ながら、あの日のライブの構成の話も、できればしたい。)

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