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UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Thank you, ROCK BAND! (3/3)

 8月29日、トリビュートライブ2日目。この日もそうそうたる面々がユニゾンのお祝いに駆け付けた。

最初に登場したのは、イズミカワソラ。ユニゾンがアマチュア時代から使用していて、どんなライブの始まりにもそこにあったSEの”絵の具”。彼らにとって欠かせないこの曲の、イズミカワ本人による生演奏からライブは始まった。彼女の奏でる音には凛とした美しさがあり、彼女の声はやさしく透き通っている。そんな彼女はステージにいる間中ずっと愛らしくて、会場はいつになく和やかなモード。
そして2組で披露されたのは、”mix juiceのいうとおり”。ユニゾンのライブで度々演奏されてはいるものの、勿論、イズミカワの演奏・コーラスが生で入るのはこのライブが初めて。実現しないと思われた豪華な夢を見届けられたファンは感動しただろう。だけどもっと言うと私は単純にただ嬉しかった。類い稀な一夜の幕開けを毎秒実感して、体が疼いて、ニヤニヤが止まらない。
そんななか次に演奏されたのは、イズミカワのトリビュート・アルバムでユニゾンがカバーした、”サイボーグ99%”。この曲は原曲版のアレンジにて演奏。イズミカワのトリビュート・アルバムの収録曲がここで披露されたということはつまり、イズミカワにとってもこのライブがトリビュートライブになったということ。なかなかに愉快な夜である。
そしてラストはイズミカワがカバーしたユニゾンの楽曲、”ガリレオのショーケース”。私はこの曲自体も、イズミカワによるトリビュートバージョンも凄く好きだ。この曲はユニゾンの1stシングルのカップリングである。「カップリング曲はライブでやらなくてもいい」という方針のあるユニゾンだが、この曲に関しては例外だ(10周年記念アルバム”DUGOUT ACCIDENT”にも収録されている)。ライブで聴いて、何この曲?と調べてみたら、1stシングルのカップリングだったら面白いのでは。という、カラクリ寄りの罠が仕掛けられている”ガリレオのショーケース”。そんなこの曲のイズミカワ版を初めて聴いたときに、おもちゃの宝箱をワーッとひっくり返したみたいだ!と、心が躍った。おもちゃの宝箱が“ガリレオ~”なら、イズミカワは、その箱にキラキラした音を詰めてひっくり返す少女のよう。この夜のステージ上の4人はとても楽しそうで、ただここに音があるということがこんなにも愛おしいのかと不思議に思ったし、自分が音楽を愛して今日という夜に辿り着いたことが誇りにさえ感じられた。

 この日2組目のゲストはBIGMAMA(金井、柿沼、東出)。彼らのこの日のライブで印象的だったのが、ファンと斎藤のテンションだ。BIGMAMAと同じステージに立つ斎藤のテンションは異常に高く、ああ、普段はバンドでの自分の役割を果たすために冷静でいるんだろうな。と、妙な分析に走りたくなるほど。
その彼のテンションの高さの理由は、旧友と共に在る今宵のステージへの感慨、というよりは、BIGMAMAのファンの少年としての喜びのようだった。それだけ斎藤はBIGMAMAの音楽とメンバーの人間性が好きなのだろう。ライブに夢中になっているBIGMAMAファンの少年の姿とステージ上の斎藤の、同じように高い熱量。それがBIGMAMAというバンドを間接的に物語る。
彼らがカバーした”MR.アンディ”には、一聴しただけでリスナーを淘汰するアグレッシブさがある。そんなアレンジを2組でやり切ったこの夜には、意味のある説明なんて必要がなかった。

 そして3組目に登場したのは、クリープハイプの尾崎世界観。尾崎とユニゾンはインディーズ時代から交流があり、互いに才能を認め合っている存在。だが、ユニゾン同様、馴れ合うような真似はしたくないという考えをもつ尾崎は、然るべくタイミングでの共演を望んでいた。そしてその久しぶりの共演が実現したのが2017年6月の、互いの企画ライブだった。あの2日間、彼らには特別な思いもあっただろう。だけど私が目撃したあの2日間は、両バンド共に、いつも通りだった。いつも通り、ただその日のベストを尽くすライブを全力でやっている。そんなクリープとユニゾンがその夜にも存在していただけだった。そして両バンドとも、その通常営業こそが最大の力なのは言うまでもない。
さて、そんな尾崎を迎えるユニゾンが刻むリズムはクリープハイプの楽曲、”5%”のイントロ。打ち込みで作られたこの曲は、普段はBa.長谷川がキーボードを弾き、ライブで演奏している。そんな曲をユニゾンとのセッションにもってくるあたりが尾崎の掴めないところだし、正直少し戸惑った。だが、曲が始まってしまえばもう、フロアは尾崎の支配下になってしまう。サビの、”ずっとそばにいて”というフレーズを、斎藤・田淵が2人でコーラスしていたのが印象深かった。そして、いつもならキーボードがやさしく響いている間奏の場面で、斎藤が挟んでいたギターフレーズも面白かった。
その後に披露したのは、”さよなら第九惑星”。ユニゾンがトリビュート・アルバムの話を持ち掛けたときに、尾崎は二つ返事でこの曲を選んだ。そんなクリープハイプ版の”さよなら~”は、どこからどう聴いてもクリープハイプだ。尾崎が歌にした途端に、彼の曲になってしまい、彼自身になってしまう。そんな魔力を尾崎はもっている。それに彼ほど、「嫌いだ」という言葉を歌いこなせる人もあまりいない。そしてクリープ版の”さよなら~”の間奏には、小川の弾く、”シュガーソング~”のイントロが挟まっているという特徴もある。この日、ユニゾンと尾崎が共に演奏した”さよなら~”では、「ユニゾンの演奏を模したクリープの演奏を真似たユニゾンの演奏を聴く」という逆輸入的な状況が発生した。と、一聴では理解不能なカオスな夜。この本に載っている写真を見た読者は、彼らの物理的な距離の近さに驚くかもしれない。だが彼らのバンドとしての精神的な距離感は、ほろ苦いくらい誠実であり続けたのだから、この夜だけは笑って認めたい。
こんな距離で触れ合っておいて、最後に披露した“栞”では、両ボーカル互いに自分の歌を譲らないバチバチのライブだったのだから、叫ばなくとも最高な夜だった。

 斎藤と田淵が袖に捌け、鈴木のドラムソロが始まった。その流れで照明を纏って現れたのは、SKY-HY。鈴木の叩くドラムと、SKY-HYのラップとのセッション。フロアは今までの余韻に浸る暇もなく熱を煽られる。
斎藤・田淵がステージに戻り、まず披露されたのは、“Diver’s High”。斎藤がゲストとして参加している、SKY-HIの楽曲だ。6月の対バンでは演奏されなかったこの曲が、2組の鋭いセッションによって繰り広げられた。
その後の“蒙昧~”での斎藤・田淵は、椅子に腰をかけての演奏。珍しい構図で歌われるSKY-HYの”蒙昧~”。彼が彼なりのメッセージを込めてユニゾンに歌ったこの曲。座らされたユニゾンは、彼の世界から少し離れたところで遊んでいるようでもあり、彼の世界のど真ん中で祝われているようでもあった。
互いの目指すど真ん中、それを本気で追いかけていたらなんと、肩を並べて走る日がやってきた。そんな今夜という王道を、両者颯爽と駆け抜けていった。

 続いてのゲストは、9mm Parabellum Bullet(菅原、滝)。トリビュート・アルバムでカバーした、”徹頭徹尾夜な夜なドライブ”からスタート。この曲のトリビュートバージョンを最初に聴いたとき、私は思わず笑ってしまった。それはあまりにも、9mm Parabellum Bulletになってしまっていたからだ。全力疾走感満載の「9mmの」”徹頭徹尾~”。それをカバーするのに鈴木は相当苦労したのだそう。あまりにも9mmな”徹頭徹尾~”を披露してみせた5人。続いて演奏した2曲ともが9mmの楽曲なのは、ユニゾンの「滝さんに暴れ倒してほしい」という希望から。ユニゾンが彼らのライブを信頼しているからこそ、そう言えたのだろう。9mmの楽曲たちをライブで演奏する5人。その時間のユニゾンは、「9mm Parabellum BulletのUNISON SQUARE GARDEN」という、初めて見る分類の生物だった。結成15周年のユニゾンをそんな未確認生命体に変貌させてしまう、結成15周年のバンド、9mm。そんな彼らの、数年に一度対バンする関係が、末永く続いてしまえばいい。

 そしてこの圧倒的な2日間を締め括る最後のゲストは、堂島孝平。ユニゾンの事務所の先輩であり、彼らが最初に知り合ったプロミュージシャンでもある堂島。彼はユニゾンのこれまでの酸いも甘いも知ってくれている存在。
そんな、バンドの支えでもある堂島が、(登場しながら)アカペラで歌い始めたのは、”さわれない歌”。この、皮肉めいているからこそロマンのある楽曲を、こんなに違和感なく歌いこなせる人なんているんだな。と、彼の歌を聴いて思った。この、ユニゾンの分身的要素を含む楽曲を、堂島が歌う。そして共にステージで演奏する。そんな夜にユニゾンが生きていられたのは、15年間、のらりくらりしつつも、ロックバンドを続けてきたからだ。
ロックバンドは面白い。15年間のうちに幾度も踏んできたであろう地団駄。大人たちに誑かされても歌ってこなかった甘いだけのラブソング。そんな過去の未来にある今、堂島の歌う”シュガーソングとビターステップ”。死ねない理由ならまだまだあって、生きてく理由は今目に映っているこの光景だったりする。誇るべきがこの夜、また一つ増えた。どうせなら、この際なら、行けるとこまで行こう。

 そして、そんなこんなでアンコール。ユニゾンの3人で演奏したのは、''プログラムcontinued(15th style)”。これに関してはもう言及するまでもないだろう。

  さて、載っているライブ等の写真をみて、ページを捲っていく。そこには、表紙のあの平和なアーティスト写真からメンバーが出ていった写真が。つまり、はじめての記念日的な1年ももう終わり。またこれからはバッキバキのロックバンドに戻る。という宣言だ。

最後にはメンバーへの個別インタビューが掲載されているが、この内容もこれまでの話に加味されているため追求は割愛。とにかくあなたも、買って読んでね。内容が濃いのに写真も充実しているから、総合満足度めちゃ高、読書おっかなさんでも安心万歳。って、そんな奴がこんな語り、読んでいないのは存じてる。

Thank you, ROCK BAND! 15th Anniversary. The program to be continued, because there music are truth forever. We have many reason to live. One of them is to love Rock'n Roll music.
You should live only for yourself. So world is beautiful. A ROCK BAND has been taught it me.

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