夜は越えられない

 脱いだ肌着が私の抜け殻な訳もないのに、何となくそんな気がした。寒いという理由だけで死にたいと呟く瞬間みたいな何気なさで、私はすべてを台無しにする。ムードが台無しだなとか、黙っていると可愛いのにとか、誰かを充たす人形じゃなくなった途端に邪魔なだけの物質になる。拒否をする強さも誘う弱さもない。ただ過ぎる時間を眺めているだけ。

 脱がされた下着がもしかしたら私の本体なのかもしれない。引っ掛けやすくて乱しやすいホックくらいの矮小な意思で、生きていることを許されたいとか。そうやってどうしようもない思想に耽っているうちに大事なことを見失う。可愛くみせているだけで壊れやすくて脆い。すぐに傷む。面倒さは自分が一番よくわかっている。妄想癖は治らない。生きているだけで苦しいから生きている。低血圧も愛してあげたかった。

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