「平成終わるってよ」、聴いた?

 「平成終わるってよ」。動画再生回数143万回のこの曲を作った若者、(しゃべくり007でたまたまみた少年、)SASUKEの楽曲を今年は欠かさずDLしている。彼が気になる存在になった理由を項目ごとに語っていこうと思う。

 最初に上げた楽曲、「平成終わるってよ」。この曲を初めて聴いたとき、率直に、面白い曲だなと思った。音楽を聴くとき、まずは第一印象、メロディーやリズムが大事になる。加えて重要になるのが視覚情報。彼は10代でありながら多彩で、ダンスやパッドを使っての演奏も、歌いながらに披露していた。その音楽の新しさと親しみやすさに惚れて、私はYouTubeで彼の名前を検索した。そうするとテレビでやっていた曲のMVが公開されていた。このMVがまた面白かった。当時を知らない彼が新元号「平成」発表時の真似をする。そこから、次の時代○○へと、時代は移り変わる。途中で出てくる発展技術という言葉とは裏腹に、映像は途中故意に雑に作られていて、それが煙たくならないことに彼の並々ならぬセンスを垣間見た。
その「平成終わるってよ」の歌詞。彼の曲には独特な歌詞観がある。ネット上でも賛否あるようだが、私の性には非常にあっていてとても好きな物言いだ。「平成終わるってよ」と、タイトルを他人事たらしめる所以、「どうせデマだろって思っていたよ」と情報社会を生きる今の若者ならではの視点で語る。だがしかし彼は本質をとらえられる人間なのだろうとも思わされる。さもなければ皮肉なんて明確に放てない。
そして2番の歌詞の区切り。言葉の区切り方が難解で、でもその甲斐あってメロディーにぴったりとハマる、パズルみたいな曲と歌詞。音楽は本当に面白い。

 次に出した曲が、「新元号覚え歌」。はて、自己プロデュース力の高さにも驚かされた。「平成~」もそうであるがこの楽曲も同様に、ベストなタイミングで発表されている。「令和」という言葉だけでこれほど遊びをもたせられることも、音楽の可能性を示しているし、何より、この曲も楽しい。「つい言っちゃう」「幸福が降り注ぐ気がする」「つい言っちゃっても害はない」という詞から、彼が新元号(令和)に抱いた印象が手に取るように聴き手に伝わる。自分や友人含め若者は、「令和」という新元号の響きに肯定的な人が多かった。そういう若者とされる世代、平成生まれが良いと思える元号に時代は移り変わる。次の時代への期待を存分に込めた、ある意味では究極のラブソングのような、そんな温かい楽曲だ。

 そしてその次に出したのが「J-POPは終わらない」という楽曲。私はこの3曲を、リリースのテンポの良さも踏まえて、よくできた三部作だと思っている。「平成」が終わり、「新元号」が始まった。新しい時代に恍惚とする私たちに平等に残されたもの、終わらないそれは私の愛する「J-POP」だったのだ。彼のように新しさと才能を感じさせてくれる若者が「J-POP」にこだわっていることに、恐らく彼よりは少し早くからそれを愛してきた私は、勝手に誇りを感じた。しかもその曲の出来も良いときた。懐かしさと新しさが弾き合うことなく共存していて、MVも歌詞も、胸に熱い。いや、違う。イントロからもう、始まってしまっている。そして思い出したかのようにダンスが上手い。ここまで来ると彼の努力さえこの一言で一蹴したくなるくらいにはちゃんと、ずるい。

 それ以前に作っていた、インフルエンサー。そして、夏の終わりにリリースされた夏ぼっちもなかなか面白い曲だったりするのだが、ここでは曲名紹介に留めておくこととする。

 長々と語ってきて最後に自分語りで申し訳ないのだが、私は彼に大いなる希望を抱いた。それは彼の音楽や存在が引き金となったのだが、その希望はそれらのみには留まらない。いつの時代にも年下や若者を下に見たり嘆いたりする大人はいるが、個人は個人を生きているし、今の若者に、ちゃんと本質が見えている人も多くいる。自分も含めそうであろうと、改めて思い知らされた。そして、今まで好きな芸能人やアーティストは年上やせいぜい同世代の人が多かった(22歳という若輩のせいでもある)から、今後もっと年老いた自分になったとき、生きていくうえでの+αのエネルギーはどこから得られるのだろうかという慢性的な下らない不安があった。しかしその不安は、音楽を以て、遠くの空まで笑い飛ばされた。これからも本質を鳴らし続けてほしい。巧みなエッセンスを添えて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?