秋空に照らされてやるつもりもない

 心が離れる瞬間を探しながら全身に触れた。いつか嫌いになれると思って接する方が、終わらない愛を誓って願うより幾分も冷静で楽だ。時々どこか裏切っているような気になって、寝苦しい夜もあるけれど。だけど好きだと言い聞かせるよりはやっぱり健全だから。だから口では愛を謳って、今夜もまた値踏みをするの。

 キライを数えて積み重ねて、高く肥ゆれば喪える。そう思って暮らしてきた。キライの積み重ねはキライ。それはごく簡単な足し算だと、そう思っていた。だけど生活というのは、分数の割り算みたいに歪な掛け算で成り立っている。いつか裏切る為に積み重ねたキライはいつの間にか感情になって、愛になって、恋しくなった。

 こんなはずじゃ、なかった。責任を取って、辞職でも結婚でも、もうあなたの好きにしてほしい。煮ても焼いてもあなたはあなたで、似ても妬いても私は私。それくらいの当然が拠り所になったから。泣いて寝て夜中に目が覚めたって、情けない顔を頭に浮かべて笑ってしまうくらいには、愛してなんていないのでした。

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