夏頻り

 夏を探して歩いたら、夏に追い越された。仕方がないから、日焼け止めのスプレーをその辺に撒いて誤魔化した。いつもこんなことばかりしているなと、まだ大人しい蝉の鳴き声に話しかけて、私の人生なんて知らないよなと鼻で笑った。酒を飲む理由なんて、酒を飲みたいからで十分だ。それなのに異性を抱くにはそれなりの理由が必要らしい。世界は狭い癖に広いから嫌いだ。君だってそうだ。広いようで狭い。

全部酒のせいにしよう。そうだ全部、酒のせい。

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