ただのオトナ

 私は、自分で自分を愛することができるし、自分で自分を嫌うことさえできる。自立した生活というのは大したこともない癖になんとなく残酷で、死にたいという嘘も迂闊には吐けない。暗い部屋で願う明るい未来にもお手本はない。昔いっぱい読んだ絵本みたいにカラフルではない世界は、子どもの頃に読んだ漫画みたいに色めく展開や精巧な設定もない。ただ続くだけだ。行く先も決まらないままのその日暮らしが続いていくだけだ。

 この世界には誰もいらない。私以外は、私の味方でも敵でもなくて、私以外のままである。ずっと他人のままである。温度差に悩ませる頭を自分で撫でる居心地のよさと薄気味の悪さで、時は永遠に流れ続けるのだろうか。

 働いている夢をみたことを、働く少し前にふと思い出す。夢のない夢を、現実で思い出す。現実を、夢の中でまた思い出す。そういう、時給の出ない労働に嫌気がさす。私の生活にはどうやら仕事が不可欠らしいが、私の体には労働など全然必要ではない。悲しきかな、の後に続く言葉が有り余って選び切れないなら、私だけの合言葉なんて決めて、誰にもバレない秘密の部屋で、そっと囁いてみてもいい。

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