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すべてが嘘でありますように。七夕の短冊にそう書いた。短冊は願い事を書くためのものなん…
魔女たちは古来と比べて随分と大人しくなった。昔はお菓子の家で釣った子どもたちを狙ったり…
「甘いお酒が好きなの」彼女は僕が持つメニューの、ファジーネーブルを指さして言った。「フ…
誰かが私の体の中を歩いている。なんだか少し、くすぐったい。胃の壁を、ウロウロウロウロ…
設定に引っ張られて生きていくのは楽だ。年齢や生活ごとに、こうすべきであるというライフス…
耳たぶの裏に宇宙があるとしたら、僕は君の宇宙を壊したいと思った。噛み砕いて粉々にして、…
夜道を歩いていた。夜道と言っても、それらしい暗さというだけでまだ夕刻と呼べるくらいの時間だ。道には少年が座っていた。少年は、いかにも少年らしい年頃で、野球よりはサッカーをやっていそうな風貌である。少年は、道でバスケットボールを蹴り始めた。道に向かって、バスケットボールを蹴っている。私は道をただ歩いている。私たちがいるのは同じ道だ。少年にはこの道がどう見えているのだろう。私の歩くこの道はどこに繋がっているのだろうか。同じ道だ。同じ道だけれど、どうやら先の道は違っているようであ
私の人生はナレーションベースだ。いつだって主役は私だけどどこかで知らない思惑が絡み合っ…
コンプライアンスが、コンプライアンスに、コンプライアンスだよと言う。それでも余計な世話…
黒い点が無数に蠢いている。それぞれ微妙に形が違っている。よく見ると色味も違っている。ち…
有名な心理テストを得意げに披露されても、私は馬鹿のふりをする。答えを知っているとは言わ…
なんだか今日はやけに目が乾いているように感じる。だから、泣いてみようと思った。目を瞑っ…
言えないことだらけだったのに、あなたに一本ずつ棘を抜かれて丸くなっていく。このままいつ…
あれは幻のような夜だった。いつかはこの上なく愛されるのだと、あの頃は信じていた。何も信じたくなくなったのはいつからだろう。お土産に貰ったゼリー状のお菓子の緑色がバナナ味だった、あの日くらいからだろうか。あの夜のことを今でも時々思い出すけれど、どうもしようがない。私が触っていたあの人は、私を触ったあの人は、一体どこの誰だったのだろう。今でもちゃんと生きているだろうか。