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何者でもなく、ただの自分だった10日間


5月のこの時期になると思い出す事がある。

遡ること30数年前の1990年の事。私は5月15日付で最初に勤めていた会社を退職した。たしか、給与の締日で辞めてくれとの事だったので、そういう中途半端な日付での退職となったのだ。

時はバブルでもあり、転職ブームでもありで仕事を辞める事にはそんな悲壮感もなかった。私は、在職中から転職活動をしていたので、4月のうちには新しい職場が決まっていた。

両親は私が仕事を辞める事を決めた時も、新しい仕事を決めた事にも何も口を出す事はなく、ただ見守ってくれていた。

退職日が決まって、新しい会社の入社日も正式に決まった。新しい会社の入社日は5月26日だ。なぜ覚えているかというと、月末の土曜日が初出社だったからだ。今は、ネットやアプリでそういう日付や曜日もすぐに分かるのでとても便利だ。

こういうカレンダーだった模様
iPhoneのカレンダーの画面

有休消化もせず(できなかったのだ)、私は1人親方の様な業務をしていたので後任(この会社のOGでかなり年上の方だった)への引継ぎは大変だったけど何とか済ませ、無事に退職の日を迎えた。

会社の内部の事には多少の不満もあったけれど、社会人の基礎を学んだ2年間だった。同僚のみんなとは楽しく過ごせていて名残惜しくもあったものの、これから始まる新生活にワクワクする気持ちの方が勝っていた。

5月16日から次の入社日までの10日間は自由に過ごせる。本当に全くの自由な時間で何をしようかワクワクした。

この10日間は、会社員でもなんでもない、何者でもない私個人として過ごすのだ。

とりあえず、洗濯や掃除などの家事は私の仕事でたまには夕飯も作ってみた。

あとは、街をぶらぶらして、ひとりでランチをしたりもした。平日の街中は人も少なくて、私はのんびりとあちこちを見て回った。
新生活に向けて、美容院に行ったり、必要な物を買ったりもした。

どっちつかずの状態の私は、どこに行っても所在なくて心細い部分もあった。
でも、こんな状態はなかなかない事なので、楽しみたいとも思った。

そして、知人に会うために、初めてひとりで新幹線に乗って大阪にも行ってみた。博多まではひとりでも行っていたけど、新幹線に乗るのは高校の修学旅行以来2回目だし、ひとりで乗るのは初めてでなかなか心細かった。
途中、長い長いトンネルで窓ガラスに映る私の顔はとても不安そうだった。

新大阪駅に知人が迎えに来てくれていた。
知人の姿を見つけた時、なんだかホッとしてしまった。博多から3時間ちょっとの新幹線の旅(まだ当時はのぞみなんて無かった)だったけど、妙に緊張してその距離以上に疲れてしまった。

知人は私を神戸に連れて行ってくれたり、京都に連れて行ってくれたりでとても楽しかった。こんな時でもないと行けないので、現地までひとりで心細かったけど思い切って行って良かったなぁと思った。

そんなこんなで、そこそこ充実した10日間を過ごし、私は新しい会社に入社した。

今思うと、この10日間は自分が何者でもないただの自分として過ごした最初で最後の日々だったんだろうと思う。

結婚前にも会社を辞めて2ヶ月半くらいは家にいたものの、あの日々は「結婚前の娘」として自由気ままに過ごすでもなく、ある意味役割があったのでただの自分として過ごしていた訳でも無かったからだ。

だからこそ、あの10日間の事は特別な日々として今でも忘れる事がないのだと思う。



この投稿で111日連続投稿ですって😊💕
ゾロ目大好きな私、大歓喜(^▽^)/⭐⭐⭐



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