ドラマの悪役と乳首解放運動
最近、映画やドラマを見ていても、悪役っていないなあと感じる。私が怖いドラマを避けているのも大きいかもしれないけど、私がみる人間味あるドラマの中にはいない。例え、自分の地位を守るために、簡単に政敵に毒を盛る韓国ドラマであっても。
それは、私の見方が変化したからなんだろうと思う。
以前は、主人公を邪魔する奴は悪い奴!と、ストーリーに従順だった。だけど、これも年の功なのかもしれないが、「相手にも相手の論理があるよね」と見られるだけの余裕が、少しは身についてきたみたい。
こうやって世界を見れるようになることは、とても生きるのを楽にする。いちいち細かいことに目くじら立ててイライラしなくなるし、もし「ん?なんか嫌だなこの人のこの態度」と感じた時にも、そう感じた全責任を相手のせいにするのではなくて、「あ、私の中に、この態度を嫌だと感じるタネがあるんだな」と自分を見つめるきっかけになったり、「この行動が、この人なりの愛なのだとしたら…?」と、一度そこで止まって考えるきっかけになったりもする。
大人になって良かったことは 自分の中に経験や知識や その他もろもろの重なりが増えていくこと。 それは、想像力につながるんじゃないかと感じています。
だけど、それも、全部、自分の想像の範囲内での出来事。
自分の経験値や、感じたことのある感情の幅を超えることは、やはり難しい。
先日読んだ、塩谷舞さんの「ここじゃない世界に行きたかった」(文芸春秋)の中で、全て読み終わって本を閉じた後になっても頭から離れなかったパートがある。「私はそのパレードには参加できない」という章だ。
塩谷さんが、フェムテック商品(生理用品)を百貨店の店頭で無料配布していたところ、年配の女性からお怒りのクレームを受けたという。日本とニューヨークを行き来する塩谷さんは、価値観の違いのボーダーラインに戸惑う場面があるみたい。
「男性のトップレスは許されるのに、なぜ女性はダメなの?」という性差を訴えるのが「乳首解放運動」で、トップレスでパレードをするのだそう。ニューヨーク州を含む多くの州で、女性のトップレスは合法らしい。
私たちは、価値観によって感情を左右される。
「乳首を出す」という事実に対して、「はしたない、恥ずかしい」という感情を持つ、その間には「乳首は隠さなければいけない」という価値観が存在するから。決して、事実=感情ではなく、どんな価値観が存在するかによって、感じ方は大きく異なる。
フェムテック商品に関していえば、ほんのこの数年の間にも、日本の女性の意識や価値観はガラッと変化したと思う。どなたかが、百貨店に吸水ショーツやセルフプレジャーグッズが並ぶことなど、数年前までは、言語道断だったというようなことを話していた。今や、Instagramライブで商品の説明をしているのも割とよく見かけるし、友人たちとの間でも話題に上ることは少なくない。コンビニで生理用品を購入しても、紙袋に入れられることはなくなった。隠さなくてはいけないもの、という価値観が少しずつ変わってきているのだと感じている。
ちなみに私も、数年前に、性に関する書籍の撮影をさせていただいたことがある。著者は、ラブライフアドバイザーとして、ゼクシィなどでも性に関する連載をされていたOliviAさん。元々性に関してかなりclosedだった私は、ドキドキしながら撮影に臨んだのを覚えている。AV女優さんとAV男優さんをモデルにした撮影で、ヘアメイクさんもいつもはAVの撮影をしているという。あっけらかんに性の話をする人たちに囲まれながらの撮影は、性にこんなにオープンな人たちがいるのか!とものすごい衝撃だった。私の価値観を変えてくれたひとつの撮影だったことは間違いない。オープンハートは、言葉で言うのは簡単だけど、凝り固まった頭ではなかなか難しい。でも、好奇心を持って、いろんな人と接していきたい。
私たちは、経験したことのないものや、自分の価値観に反するものに対して嫌悪の感情を抱いてしまいやすいんだろうと思う。
そして、逆に言えば、価値観を変えていくことで、自分の行動や感情も変わっていくということ。価値観を変えていくために必要なのは、別の価値観を持つ人との時間を増やすことだと思う。
塩谷さんの「ここじゃない世界に行きたかった」には、ルッキズムについても書かれていて、それについてもいつかnoteが書けたらいいなと思っている。
両親は、人の外見についてやんや言うことがある。特にテレビの中の人に対して。それに対して私に賛成を求められた時などには、「失礼だと思う」と伝えるのだけど、これも環境や時代によるもの。先日、「あの人私と同い年なんだあ、年上かと思った」とつぶやいたら娘に「失礼だよ」と苦言を呈されてしまった…。
こうやって時代は変わっていくのだろうし、人間が葛藤を繰り返しながら、誰もが心地よく暮らせる地球になっていくのだとしたら、私も自分の着ているものを脱いで、新しい自分になっていきたいと思うのだ(私も、乳首解放運動に参加するのはまだできなさそうだけど!全然関係ないけど、ヌーディストビーチにはいつか行ってみたい。)
たくさんの人と出会って、
たくさんの話を聞いて、
感情の幅をたっぷりと広げていきたい。
新しい世界を、
新しい時代を見るのが好きだから。
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「Authentic Journey 」主宰
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フォトグラファー 清水美由紀
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