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願書締切2日前に出願を決意。30代のある日、わたしは「放送大学」の大学生になった。

20代から30代に突入しただけでも女性として心が重かったというのに、その時のわたしと言ったらひどかった。

10年以上付き合って、当然に結婚すると思っていた彼と、ある日あっけなく別れた。キラキラの指輪も見に行って、どれにするか決めた後だった。

そんなこんなで、30代前半の2年ほどは最悪なものだった。周りはほとんど結婚してお母さんになっているのに、わたしときたら、もうなんにも上手くいかなくて、みじめで心が限界だった。

あまりにズタボロで、自分磨きをしよう!なんて言っている場合ではない。だけど、何かしていないと心がもたない。このままの腐った毎日でいい訳もない。何か習い事でもしようかと考えた。でも、心の基礎体力がなく、何にも興味が向かなかった。


ーーそして、3月の誕生日を目前に控え2月も終わろうとしていた頃。図書館で見かけた「放送大学」の資料の存在を、なぜだかふと思い出していた。


わたしは、大学には行っていない。

親は、子どもにも学びにも全く無関心だった。わたし自身勉強をサボるようなこともなかったものの、勉強しろと口出しされることも、将来について親子間で話し合うこともなかった。

今思えば親自身、学ぶことの楽しさやそれによって享受できるものを知らずに人生を歩んできたんだと思う。

わたしは高校を卒業して、すぐに家を出て働いた。本当は製菓専門学校に進んでパティシエになりたかったわたしは、専門学校や大学に進んだ友達が、それはそれは輝いて見えて羨ましかった。わたしが行きたかった学校へ進んだクラスメイトもいた。

そして何より、親に気にかけてもらえる大切な存在として「普通に」生きていることが、何より羨ましかった。


そんなことを思い出して更に心がチクッとしながら、「通信制の大学って、どれくらいお金がかかるんだろう」と思った。

さっそく図書館に行って放送大学の資料をもらい調べてみると、驚いた。想像よりもずっとずっと優しい金額だった。この金額なら、払っていける。けど、仕事をしながら果たして勉強できるのだろうか。

どうやら、4年で卒業する必要はないらしい。とは言え、大学受験もしていない、大学にも行っていないわたしに「大学の勉強の大変さ」など、想像してもできるものではなかった。

けれど、どうにかして「今」を変えたかった。
もうこれしかない気がした。本当に心がもたなかった。

1学期の願書出願締切は、2月28日。
その日は、すでに2月26日。

大学に行っていないわたしは、出願に必要な卒業証明書も、未開封だった卒業証書の筒の中にそのまま綺麗に入っていた。高校に出向いて卒業証明書を申請する必要すらなく、出願書類はあっという間に揃った。

そして気がつくと、出願を済ませていた。
自分の手で、閉塞感のある毎日に風穴を開けた瞬間だった。

2019年の春、わたしは32歳で大学生になった。


※放送大学について
・出願の詳細は、こちら
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