見出し画像

夢のゆくへ

子供のころ歌手になりたかった。

きれいな服を着て、楽しそうに歌う夢見る少女に憧れた。

家族の前で、デパートの催しで、私は怖じけずに歌った。間違えても平気だった。好きだから歌った。

ピアノも弾いた。ビートルズや自作の曲を弾いた。フォークソングの最盛期だったその頃、若者は、みな歌ったり弾いたりした。

男の子たちはギターを弾いて、女の子の注目を獲得した。

教室の窓から、サッカーに夢中な男の子の背中を、もっと夢中になって、追いかける女子がいた。

スマホもインターネットもビデオさえも無かったから、読書し、交換日記やラブレターを書いた。

好きな子の読んでいる本の題名をこっそりメモして買って読んだ。

ドキドキしながら、下駄箱の中へ入れた憧れの先輩への恋文。一睡も眠れぬまま、期待と後悔がごっちゃになった心のまま登校する。勉強など、一切、頭に入らなかった一日。


振り返ると、なんて創造的な青春時代だったんだろう、と思う。

いつの頃からか、歌もピアノもそっちのけになり、自分の想いをノートに吐き出す事さえも、辞めてしまった。

歌手になれる人はほんの一握りの人だし、ピアノだって、上手じゃないことは分かってきた。

書くべき自分が、一体誰なのか分からなかったし、知るのも怖かった。

世の中から、無駄がどんどん消されていき、残ったものは、目的意識と成功願望。

成功者と落ちこぼれの間には、はっきりとした線が引かれ、線を越えることのないように、子供も老人も気をつけて生活する。

最近の子供の夢はユーチューバーになる事。好きな事して、お金を稼いで、ちょっと有名になる。

何だか悲しくなる。

子供も、夢の見方が、分からなくなった。

夢は 

何処に

消えてしまったのだろうか。

















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?