MIMIZUQ インタビュー
コロナ禍で通常のバンド活動さえままならない中、
ヴォーカル不在での活動をよぎなくされたMIMIZUQ。
それでも、楽器陣3人で前進し続けてきた彼らに、
とうとう新ヴォーカル、森 翼の加入が発表された。
4人が揃ったところで、決定までの歩み、そしてこれからの展望を聞いた。
再び流れ始めたナミダミュージックに耳を傾けたい。
●新ヴォーカルのご紹介の前に、これまでどんな風にヴォーカルを探してきたかをおうかがいしたいんですけど。
AYA:まぁ、難航しましたね。
seek:ヴォーカリストとして声をかけたのは、翼君ひとりなので、そういう意味では難航はしてないんですけど、環境的な問題ですかね。コロナになりました、TAMAさんが脱退しました、3人でどうする? から始まって。「避密の森」(TALK&LIVE)という活動をやってはみたけど、とは言えバンドとして動きたいんで、どうやって探す?、どんな人がいい? から始まりましたね。
AYA:いろんな案があったんですよ。決まったヴォーカルを立てずに、いろいろゲストを呼んでやっていくという案もあったし、他ジャンルのヴォーカルを探すというのもあったし、ヴィジュアル系から探すというのもあったし。
seek:もともとMIMIZUQは、どんな可能性にもいけそうなバンドだというところからスタートしてるから。こういう状態になったときに、3人の考えをもう一回ちゃんと整理しようっていう感じでした。
●そこから改めて考えたんですね。いずれにせよ途中から加入で、それもバンドの顔であるヴォーカルを見つけるのは難しいですよね。
poco:いわゆるヴィジュアル系の、もともとどこかのバンドのヴォーカルが入るのがMIMIZUQにとってよいのかどうかも考えましたね。あと、年代もちょっと考えました、上の人がいいのか下の人がいいのか。ヴォーカリストを固定して誰かを入れてやるんだったら、候補は本当にたくさんあったんです。幅広く考えてはいましたね。
seek:既にバンドとしてあるところに入ってくるってなると、たぶん萎縮するところはあるだろうし、それに負けないぐらいのパワーを持ってる人がええなっていうのはありましたね。
poco:後輩バンドの●●君ですっていうのだと、ずっと後輩になるから。
seek:翼君は、年齢的には後輩ではあるんですけど、もともとの翼君が自分の存在を持ってる人なんで。メンバーとしてぶつかっていけるだろうなって勝手に思ってました。まだその段階では、SNS越しなんですけど(笑)。勝手な妄想でしかなかったです。
●もともと翼さんとはお知り合いだったんですか。
seek:過去にラジオで一緒にお仕事をさせてもらったことが一回あって。それでTwitterを相互フォローしてただけなんです。だから、全然接点はなかったんです。
●翼さんに声をかけたいと思ったのはどういうところから?
seek:年齢とかジャンルとか、いろいろ取っ払ったときに、AYA君が作る曲とかやりたいことに合う声の人なんちゃうかなと思ったんです。
AYA:声に関しては、3人ともこういう声がいいという正解は見えてた気がする。こういう声が欲しいけど、どういうジャンルから探そうかなって思ってた。
●その声の持ち主をseekさんが知っていたわけですね。
seek:その後、翼君を二人に提案するまでにちょっと時間がありました。全然ジャンルも違うし、こんな子がおるけどって提案しても、紹介できるほどの関係でもまだなかったし、人間性もまったくわからんし。どういう感じで二人に話すのがええかなって時間をおいてたんですけど、やっぱりずっと気になってたんですよね。それで二人に提案してみました。
●seekさんから提案があったとき、お二人としては?
AYA:いいねって思ったけど、ジャンルも違うし、なかなか難しいかもなって思ってました。
poco:お名前は存じ上げておりますっていう感じで、歌いいよなって思ったけど、もう既にソロアーティストとしての自分の道を現役で歩んでるからなぁ~という感じもありましたね。
●それでも誘ってみようということになったと。
poco:それからさらに数カ月単位で寝かせてたよね。
seek:二人に話してからも、ちょっと寝かせました。翼君はシンガーソングライターとして活動してはるし、SNSを見てても仕上がってるというか。俺らとバンドをやる必要性がそこにあるのか考えたら、別にないんかもなって思ったり。そこをどういう感じで接触していこうか考えてたんです。
poco:声のかけ方は気を遣ったんじゃないかな、seekさんは。
seek:それから数カ月ずっと、翼君のSNSを見てたんです(笑)。毎日こんな感じか、歌の動画も上げてはるな、声ええなって思いながら。まだ声をかけるタイミングと違う気がするなって。
poco:めちゃくちゃストーカーしてたな(笑)。
seek:そう(笑)。そんなときに、いろいろ自分の中で変わりたいって、ポチョンとつぶやいてたときがあって。今や!って思って、二人に、今からいきます!って言って。
poco:新しい自分があるよ、ここに!ってね。
seek:それで、TwitterのDMから長文を送ったんです。実はこうこうこういう者で、ご無沙汰してますから始まって。こういうことを考えてて一回お話させてもらえないですかって。それがスタートやったんです。
●翼さんにとっては、いきなりDMが来たんですね。
poco:変わりたいって言ったら、次の日に。
seek:怖い怖い(笑)。
AYA:見られてる見られてる(笑)。
森 翼:自分でも、何か新しいことがしたかったんですよね。コロナになって、ひとりで何ができるかみんなで大喜利するような状態になったときがあったんです。家で配信したり、ギターでひとりで歌ったり、みんなひとりで完結する世界を作り始めて。それはそれで面白いと思ったんですけど、自分としてはそれを続けていくのはもう面白くないと既に感じていて。ライヴハウスでライヴをしてるときは、対バンやったり、お客さんやったり、スタッフさんやったり、何かエッセンスがあることで自分はこんなことを思うんやって自分を理解して、それを音楽に注いでいくんですよね。そういう時間が一番好きやったんです。でも今は、家から外に出られへんし、このままずっとひとりでやってるだけやったら面白くないし、これを破りたいのにどうしたらいいかわからなくて行き詰ってたときに、全然違うジャンルからお誘いがあって。こういう世の中になっても、未来に向けて何かしでかしてやろうと思ってる人がおることがすごく嬉しかったんです。僕もそういう気持ちを持ってていいんやと思って、ご挨拶させてくださいって返事をしました。
seek:電話で一回話しませんかってなって電話で話して。まったくどんな人かもわからない状態やったんですけど、好感触では捉えてくれはったんかなと思って。でもね、バンドに入る入らないっていうのは、もっとちゃんとした話やから。じゃあ4人で会いましょうって。
森 翼:4人で焼き鳥屋さんに行ったんですよね。あれが一番初めやったと思う。
自分が楽しい場所だから楽しい音楽が鳴らせる
●初めて4人で会ってみて、どうでした?
森 翼:いい人過ぎて、ウソちゃうかなって思いました。騙されて、帰りに何か売りつけられるんちゃうかなってほんまに思って。
一同:(笑)
●そのときはどんな話をしたんですか。
seek:いろんな話しましたよね。生まれがどうやとか、どんな感じで東京に出て来たとか。ちなみに、森 翼って本名?
森 翼:本名です。
seek:やっぱりそうなんや。
poco:すごいですよね。
●てっきりMIMIZUQというバンドに寄せたステージネームをつけたんだとばっかり思ってました。
poco:運命ちゃう。
seek:でも意外とね、そのことは何とも思ってなかった。後からヤバない?って、じわじわきた。こんな名前のヴォーカリストはおらんやろって思って。
●翼さんは、MIMIZUQの音楽に対してはどんな印象を持ちました?
森 翼:MIMIZUQの音楽を聴くというよりは、もし僕がヴォーカルになるんやったらっていう感じで聴いてしまいましたね。ヴォーカルの人ばっかり見てて。それで、僕が新しくヴォーカルになったほうがいいなって思ったから、やりたいっていうのを伝えようと思って。それは、前のヴォーカルさんがどうっていうんじゃなくて、僕が持ってるものとか見て来たものは、MIMIZUQとかヴィジュアル系のシーンの中では持ってない人が多いんじゃないかなと思ったからなんです。逆に、ヴィジュアル系の武器は、僕のシーンでは誰も持ってないと思うから、知らないところに行けるし、すごい嬉しいし楽しいと思って。自分が楽しい場所やったら、楽しい音楽が鳴らせるやろうと思ったんですよね。
●翼さんは全然ヴィジュアル系はやってなかったんですよね? 聴いたりすることもなかったんですか。
森 翼:やってないですね。お姉ちゃんがGLAYとかL’Arc~en~Cielとかが好きで、僕も聴いたりはしてましたけど。ライヴハウスに出るようになってからは弾き語りが多かったんで、対バンで一緒になることもなかったです。
●それで自分がそこにいる様子を思い描けたというのがすごいですよね。
森 翼:たぶんヴィジュアル系のシーンのヴォーカルさんのセオリーどおりでは全然ないと思うんですけど、わざわざ別のものにしたくないと思うんですよね。何かを表現したいというのは全く変わらないから。MIMIZUQはコンセプトがしっかりあるんで、僕が表現できることの幅も広がるのかなと思ってます。もう既にイメージしてるものはあるんですけど、それがいつライヴで再現できるか、ライヴができる日程が思ってたより遠くなってるんで、今はどんどん緊張感に変わってきてます。でも、楽しいですね。
seek:早い段階で翼君は曲を書いてきてくれたんです。
poco:バンドでやるとしたらこんなんかなって。
seek:そういう姿勢もすごく嬉しかったですね。それを持って、一回試しにリハに入ってみますかって。スタジオでジャムりながら、翼君のメロディに対してみんなでアレンジをつけてみるみたいな、バンドっぽいことをやってみたんです。
●そのときの手応えは?
seek:当たり前ですけど、歌、上手いなって(笑)。それに器用やなって思いました。その場でいろんな対応ができるし。ヴォーカリストとして今まで積み上げてきてるものがすごく見えるというか、それはすごく感じました。興奮しましたね(笑)。
poco:スタジオの日は楽しかったね。その日で、確かにみんなが持ってるものが混ざり始めたよね。
●それがいつ頃のことなんですか。
poco:いつ? 去年?
●かなり前なんですね。
seek:(スマホで確認しつつ)初めて4人で飯を食いに行ったのが11月12日ですね。電話をしたのが10月21日。それから、リハに12月2日に入ってますね。
AYA:それで1月のライヴ(@渋谷PLEASURE PLEASURE)に見に来てくれた。
●今はもう6月だから、発表のタイミングを待っていたんですね。
seek:レコーディングもし始めてはいたので、なんだかんだであっという間と言えばあっという間ですね。
新しいMIMIZUQの始まりを告げるのは、
森 翼が作曲した「Tic-Tac」
●ヴォーカルが変わることで、三人の書く曲が変わるとかそういうこともありそうですか。
seek:今、何曲かレコーディングの準備をしてる曲があるんですけど、曲も変わりますけど、歌詞もそうですね。
AYA:ちょっと明るい気がしますね。曲というか、色味というか。天気で言うと、前は雨が多かったんですけど、晴れも入れるんじゃないかなっていう感じが最近してます。
森 翼:衣装も明るい感じですよね。
AYA:そう、明るい感じにしてます。
poco:デニム関係のブルーが映えてますよね。
●衣装の面について言うと、翼さんはどういうキャラの格好なんですか。
seek:動物じゃないんですよね、AYAさん?
AYA:ミミズクが連れてきた人間にしました。森に来た人間なんです。
poco:だから、森翼でいいんです。吟遊詩人みたいな。森にいそうやん。
●3匹の動物と、人間なんですね。
AYA:いろいろ考えたんですけどね。違う動物になったらそれはそれでどうかなと思って。でも、森君をミミズクにしたら、2代目みたいな見え方がするから。人間という役がいいかなって。
seek:AYAさんがいろいろ考えてるし、今回から、映像も担当するようになったんです。
AYA:監督をやりました。絵コンテを書いて、撮影したんですよ。
seek:ほんまアホやから、「撮影OKです、終わりです」って言って、「このシーンは撮らんでええの?」って聞いたら、「あ、撮ってへんわ」って。クソポンコツ監督なんです。
AYA:監督は大変やって思いました。時間管理とかをやってくれる人がおらんとバランスがとられへんなって。時間が足りひんから、それも考えんとあかんし。大変でしたね。
●コツコツ勉強したことが形になったんですね。
seek:もともとAYA君の頭の中には世界があるから。
poco:ファンタジック大王がいよいよ牙を剥き出しました。
seek:3匹が寝ているところから始まるんですよ。
AYA:TAMAさん脱退のときに、みんなに布団をかけて去っていくみたいなイラストを描いてるファンの子がいたんです。それがすごくいいなと思ってて。それで寝てるところから始めようと思ったんです。そこに森君が起こしに来るんです。
●この記事が公開されるときには、全貌が明らかになってますね。
seek:タイミング的にどういう活動していきたいか話してたんですけど、3周年記念のタイミングで正式加入というのが一番流れ的にはいいかなと思って、6月22日に発表することにしました。
●そして、まずは7月1日に音源が発売になるんですよね。
seek:夏以降いろいろと活動できればいいなと考えてるんですけど、その前に新しい曲を聴いてもらえたらなということで配信で出します。翼君が書いた「Tic-Tac」です。
森 翼:最初に、スタジオでみんなでやった曲です。最初のスタジオで、全員がやったことのない曲を一曲はやりたいと思ったから、持って行きますって言ったんですね。それで、弾き語りのデモ音源みたいなのを作って皆さんに送りました。スタジオに入ったときに、それをみんなでいろんなアプローチでやってみたんです。
AYA:SEKAI NO OWARIで、とか。
森 翼:それもめっちゃ面白かったんです。スピッツバージョンをやったときに、みんなが「ああ、売れた~(笑)」って言ってて。あれがすごい楽しかった。
AYA:スピッツとセカオワと、あと何をやったっけ?
森 翼:昔のゆずバージョン。そこでも、共通認識があったんですよね。「スピッツっぽくやろう」と言ったら、みんなが思ってるスピッツの好きなところが同じやったりして。それってすごく大事なんです。すごくやりやすかったし、楽しかったですね。
●結果、すごく明るくて、ワクワクするような感じで、始まりにふさわしい曲になっていますよね。
森 翼:前向きな感じのテンポ感にしました。ひとりでやっているときは、明るい曲を書くのが苦手やったんです。プライべートでも、楽しい瞬間を記録に残すのが苦手で。でも、4人で話をして家に帰ったときに、すごく明るい気持ちになって。このバンドやったら、それを音楽に残すのが全然怖くなかったんですよね。だから、そういうメロディを作って、そこからさらにブラッシュアップして。AYAさんが歌詞をもっともっと前向きなものにしてくださって。自分の中でもすごく新しい作品を作れました。
●翼さん自身の、新しいことを始めるワクワク感が出てるんですね。この4人の最初の曲ということで、ほかの皆さんはどんなことを考えましたか。
seek:コンセプトも同時進行でAYA君が考えるんですけど、それが歌詞の内容とかに出てるし、4人のスタートがピッタリハマってると思いますね。
poco:未来へつながるんです。
AYA:どこまで言うべきかな。アルバムを出したいと思っていて、そこまでコンセプトはひとつ考えてるんです。その序章というか。電車をひとつのテーマにしようと思ってるんですけど。
poco:ポッポーって、完全に汽車やけど(笑)。走り出しましたね、イントロでね。AYAさんはドレッシーな感じでおでかけしそうでしたし、seekさんは貴族みたいにピシッとキメてましたし、pocoさんは紅の豚みたいでしたし。何か冒険が始まっていくんじゃないですか。
●これからが本当に楽しみですね。ここまで時間がかからなかったわけじゃないですけど、すごく自然にまたスタートが切れてる感じがします。
seek:今までやったら、バンドが活動できてないみたいな焦りとかがあったと思うし、今もないわけじゃないんですけど、コロナのこういう状況やったんで、落ち着いて話しながら、時間を気にせず、1個ずつちゃんとつくっていく時間にはなったのかもしれないですね。初めてこの4人で撮影をしてたときに、集合写真を撮ってたら、翼君が「バンドみたいですね」って言ってたのがよくて。
森 翼:誰かと一緒に並んで写真を撮ることがなかったから。うわぁって思ったんです。バンドを組むのは初めてなんで、集合のアー写を撮影してるときに、今バンドしてるって実感しましたね。
●4人でステージに立ってるところが早く見たいです。
seek:翼君のソロのライヴはちょこちょこ見せてもらってて、ステージングも含めて、体全体で歌っている感じがするから、早く一緒にやりたいなと思ってます。バンドのメンバーとして一緒につくるステージがすごく楽しみです。
poco:なかなか人前でライヴができないけど、さっきseekさんが言ってたみたいに、焦ってもしゃあないし、やれるときにガツンとやりましょっていう感じになってますね。
●状況はともかく、バンドとしてはやれる形が整いましたからね。
poco:整いましたね。ややもしたら、友人や知人にもどうするの?って思われていたかもしれないですよね。活動はしてきたけど、ヴォーカルが入ってバンドは続きますという発信が全然できてなかったから。去年の10月ぐらいから決まってても言えない、言わなかったことをやっと言えるんで、ライヴがないにしてもお伝えできるのはいいですね。
●直接ファンの前に出られるのはこれからですけど、翼さんにとっても新しい始まりですね。
森 翼:外から見てたヴィジュアル系のイメージなんですけど、ライヴでお客さんと一体感をつくっていく、全員が参加者っていうシーンだと思ってるんです。ライヴをして、その世界観を作る人が増えていくんやと思うし、ライヴをたくさんやって、僕たちの音楽とかその世界観に浸ってくれる人とかファンの人を増やしていきたいですね。そういう人がほんまにいっぱいになって、武道館でライヴがしたいんです。そこに行きたいという大きなはっきりとした目標があります。そこに結びつく自分、MIMIZUQのヴォーカルで在りたいです。
seek:4人で焼き鳥を食ってるときに、翼君に「どんなバンドにしたいんですか」って言われたんです。これは迷わずに言わなあかんと思って、「終わらないバンドにしたいです」って言ったんです。この4人で続けていけるバンドにしたいですね。
新ヴォーカル・森 翼についてもっと知りたい方は、
『MIMIZUQ新ヴォーカル・森 翼に10の質問!』をチェック!
インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。