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The Benjamin インタビュー

新型コロナウイルスの影響がここまで長く続くとは誰も思っていなかった。そんなコロナ禍でも、The Benjaminは楽しくバンド活動を続けている。
それは何よりも、音楽が好きで、喜んでくれるファンがいるからだ。
デジタルシングル『ボートが揺れた/ブーツを脱いで』には、
忘れられないものとなった特別な夏が描かれている。
制作に制限がある中でもバンドはできるのだという
力強い彼らの想いが込められた2曲をぜひ聴いてほしい。
9月、10月と、無観客配信ワンマンも決定。
配信だけに知らないバンドに気軽に触れるチャンスと思って、
おおいに手を伸ばしてみては?
(この記事は無料で公開します。どうぞサポートもご検討ください)


■『ボートが揺れた/ブーツを脱いで』は、作詞作曲した人とメインヴォーカル違いますが、それはもともと考えていたアイデアだったんですか。
ミネムラ”Miney”アキノリ(以下、Miney):アルバムが完パケした日かな?、そのときには、次はそれをやろうって言ってましたね。

■何かねらいがあったんですか。
Miney:マンネリ化…

■ん?
Miney:いや、マンネリ化してないけど(笑)、それも面白いかなと思った。

ツブク“Mashoe”マサトシ:アルバムをいつもギューッと集中して作っちゃってるから、夏はもうちょっと遊びというか、そういう感じがあってもいいかなと思って。アルバムを作った時点では(新型コロナウイルスの感染で)こういう感じになるとは思ってなかったから。ツアーにも行くだろうし、そこでこういうのがあったら面白いかなと思ったんですよね。

■自分が歌わないという前提があると、曲作りも変わってきたりするんですか。
Miney:全く意識してないかと言ったらそんなことはなくて。でも、意識はしましたけど、結果作れるものしか作れないというところに行きつきました(笑)。どっちかというと、僕は作ったときは自然体で、曲をもらったときのほうが考えたかな。自分の中に3人くらい声色があるから、Mashoeがそのうちのどれをイメージして作ったのかとか考えたり。

■この曲を俺が歌うの? みたいな驚きではなく。
Miney:嬉しかったですよ、こんな突き抜けた曲を歌わせてもらえるんだって思ったから。そこで、Mashoeがどの声色をイメージして作ったのかなって考えたんです。できれば期待に応えたいし、さらに120%ぐらいをMashoeに返したいということのほうがあったかな。

■Mashoeさんはいかがでしたか。
Mashoe:曲を作るときはすごく悩みましたね。前のバンドのときもほとんど曲作りをしてなかったから、人に自分の曲を歌ってもらう感覚があんまりなかったし、The Benjaminになって本格的に曲を作り始めて、自分で歌うから歌の癖とか譜割も自然に出て来たまま整えていくだけだったんです。

それでまず曲調を考えて、こういうのが似合いそうだなとか、こういうのを作ったら意外かなとか。Mineyもそうだし、今までMineyの歌を聴いてきた人たちが一番ビックリしたり、ワーってなってくれたりする曲調を考えてる時間のほうが長かったですね。どうしようかなって考えてる時間がすごく長かったです。そこから、爽やかなポップロックみたいなのを歌ってるのは結構珍しいかなと思って、突き抜けるような曲になりました。

2020年の特別な夏だからできた、特別な曲

■作品自体をこういうものにしようみたいなのは皆さんで考えてたんですか。
Miney:毎年夏はいつからかずっとシングルを出してるんです。夏って、僕らが生きていく中で大事というか、思い出を作りやすい季節だから、2018年の夏曲、2019年の夏曲、2020年の夏曲っていう風に毎年置いていこうねって思ってるんです。

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■そこで2020年の夏曲はどうしようと?
Miney:そこはもう出て来てビックリじゃないですか(笑)。それぞれの作曲者がこの夏はこれできたって。出て来るまではほかのメンバーはお楽しみですね。

ウスイ“Tacky”タクマ(以下、Tacky):結果、優しい夏になりましたね。

■そうですよね、ギラギラした夏の海とかとちょっと違う。今年の夏は、ツアーもライヴもできない、ある意味特別な夏になりましたよね。そういうのは何か影響しましたか。
Miney:曲調は2月ぐらいには決まってたんですけど、歌詞を具体的に書き始めたのが5、6月なので、影響しましたね。そういうワードをメロディに対して自然に当てるようになったり。逆に気持ちを込めれたからよかったです。今年は本当に特別な夏になるから、より濃密な気持ちをぶつけられたような気がします。

Mashoe:だいぶ影響しましたね。ライヴの中止とか延期のお知らせも多いし、結構みんな凹んでんだろうなとか思って、ちょっと楽しそうな曲のほうがいいかなとか考えたり。歌詞は願望が強いかな。こういう夏が来たらいいなっていう願望が詰まってるんですかね。

■こういう状況で作品を出すとか作ることについて、Tackyさんはどう感じてますか。
Tacky:僕がこのタイミングで曲を作ったとしたら、こういう優しい感じにならなかっただろうなと思うんですよね。自分ならどっちかというと鬱々としたというか、怒りをテーマに進めてしまうかなと。だから、このタイミングでこういう優しい曲を作るのはすごいなと思ってます。

■Tackyさんから見て、自分が歌わないのを前提に2人が曲を書いてるのは、何か違いみたいものは感じられたりするんですか。
Tacky:3人の中で一番客観的に見られると思うんですけど、

Miney:監督だからね。

Tacky:うん。でも、それぞれがそれぞれなんですよ、それぞれ節が出てるというか。だから、歌を聴くのがすごい楽しみでした。

Miney:あ、そうか。(作曲者が歌っている仮歌入りの)原曲も聴けるのはTackyだけだよね。

Tacky:歌う人が入れ替わったらどうなるんだろうと思ってたし、実際に入れ替わったら、お互いを汲み取っててすごくいいなと思いました。そういう意味では僕も楽しかった。すごくよかったですね。

■こんなご時勢なので、レコーディングも宅録になったんですよね。
Mashoe:できる形でやろうということですね。

Tacky:できないことはできないんで。スタジオでがっつりとはできないですよね。

Miney:スタジオでエンジニアさんを立ててやるのが僕たちは理想だから、コロナが収まったらまたそうしようと思ってます。そのときには、エンジニアさんは俺たちが頭でっかちになってるから困ると思いますよ。“このマイクは…”とか、今までそこまでこだわらなかったのに言い出すんで(笑)。

■ひとりで宅録することで何か違ったことはありましたか。
Tacky:どうだろう。スタジオでやるより、時間とかはあまり気にしなくていいし、自分のタイミングでいけるから、楽っちゃ楽ですけどね。

Mashoe:アンプを鳴らさないぐらいの違いですかね。楽器のプレイはそんなに変わらないですね。気にすればいくらでも気になるし、上手いにこしたことはないし、きれいに越したことはないんですけど、ロックバンドをやってるわけだから。ちょっとした粗さとかの許容範囲が自分の中にあるじゃないですか。それが決まっちゃえば、一発でいっちゃおうって。そんな感じですかね。

Miney:俺は心の中では、スタジオでエンジニアさん立てたほうがいい作品になるんだけどなって思いながらやってましたよ(苦笑)。スタジオのほうがいい音するんだよね。

Tacky:それは絶対そうだよね。

Miney:このニュアンスももっと出るんだよなって思いながら弾いてたり。

Tacky:アンプの細かい空気感とかタッチもそうだし、真空管がちゃんと歪ませてる音のほうがいいし、全部違うから。

Miney:みんな、わかんないって言うかもしれないですけど、わかってるんですよ。聴いてて何となく心地よさとか微笑ましさみたいなのはそういうところに潜んでるから。聴いてもわからないって言うかもしれないですけど、実はだいぶ違うんですよねって思いながらやってますよね。

■それでも、この期間中は音源を出さないでおこうとはならなかったわけですよね。
Miney:だってがライヴできないんだから、せめて新曲とか音源とかでみんなを喜ばせなきゃね、って思いますよね。

Mashoe:ライヴが出来ないからって活動ができないわけじゃないですからね。

Tacky:配信で新曲を披露もできるんでね。

Miney:結果的には勉強がいっぱいできるから楽しかったですよ。新しく覚えることもいっぱいあったし。

音源発売、配信ワンマンと毎週のツイキャス生演奏、The Benjaminは進み続ける

■「ボートが揺れた」の曲調はどんなところから出て来たんですか。
Miney:するっとみんなが口づさめるような流れにしたいなと思ってたんです。●ピ●●みたいなやつ。

一同:(笑)

Miney:バンド名を出さないほうがいいな。90年代のカラオケで歌えるようなバンドさんの曲みたいな。

■なるほど。夏だけど爽やかな感じ。
Miney:今年の夏はそれでいこうと思いました。夏の終わりのちょっと切ない、ひと夏の思い出みたいなのが過ぎ去る狭間、思い出に変わる瞬間ぐらいの状況を描きたいと思ってました。

■その歌を歌うにあたっては?
Mashoe:Mineyも言ってましたけど、どういう声色で歌おうかなって考えて、爽やかめに、優しく歌えるように、っていうところを一番考えて歌ったかな。ちゃんと物語を伝えられるようにしました。あんまり癖があるとそっちに耳がいっちゃうんで、できるだけしっかり言葉を伝えるように歌おうと思いましたね。

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■歌は爽やかでちょっと切なさもあるんですけど、サウンド的には弾んでる感じで、The Benjaminの音楽らしい楽器が鳴ってる感じもちゃんとするというか。
Miney:わかります、うん。そこら辺はブリティッシュロックの、1980年代のPRIMAL SCREAMとかかな、そういう風にアプローチしていったところはありますね。バンド全体のコンセプトとしてUK感とかは入れていきたいから。

Tacky:原点がブリティッシュロックとかなんで、ロックバンドがポップな曲を作るみたいな感じで、ポップすぎないんですよね。●ピ●●もそうじゃないですか。そういうところも近いのかなと思います。

Miney:90年代のバンドね。ヴィジュアル系じゃなく、ビーイングでもなく(笑)。

■この歌詞って、最後は昔の夏を思い返してるんですよね。
Miney:それは自由に想像してもらえれば。昨日はこうだったけど今日はこうだった、でもいいし、ひと夏の間でもいいし、次の夏はこうだったって考えてもらってもいいですし。そういうひとつの恋のストーリーではあります。

■だからちょっと感傷的なんですね。
Miney:1コーラス目の“ボートが揺れた”と、終わりのほうの“ボートが揺れた”の雰囲気を変えたかったんです。1コーラス目は二人が愛を育んだ瞬間にボートが揺れて、終わりのほうはちょっと離れた場所で、季節の風で揺れるボートを眺めてるだけみたいな。そういうストーリー作りにしました。恋が終わった虚無感の中で、西風、いわゆる秋風が揺らすボートを眺めてるだけみたいな。

■そしてMashoeさん作詞作曲の「ブーツを脱いで」は、Mineyさんが歌うことを踏まえて曲調を決めていったわけですね。
Mashoe:そうです、そこからです。ブーツというワードはあったんで、それを使って歌ってもらうのにどうしようかなと思って考えました。コロナ禍で、春を感じないうちに気づいたら冬から夏になってたな、冬に出かけてた頃に履いてたブーツを、夏になっても無意識に履いて出掛けたけど、もうブーツじゃないじゃん、っていうところを書きたかったんです。その時季、ずっと(自粛期間で)ひきこもっていて、たまには出掛けようって自然に履いたらブーツだったということが実際にあったんですよね。

■そしてMineyさんは、どの声色で歌おうと決めたんですか。
Miney:自分でひととおり3種類の声色をプリプロしてみました。言葉が聞き取れるほうがいいし、「ボートが揺れた」よりはロック感があるので、少しロックを感じさせるラインの声色で落ち着いた感じですかね。人に曲を与えることは慣れてますけど、人から曲をもらうなんてことはないんで、どうやって咀嚼すればいいんだろうと思いました。

Mashoeの歌詞は物体の動き、水が跳ね上がるとか、虹を描くとか、そういう表現が多いんですけど、僕は書かないから。シチュエーションの説明っぽいことは書くんですけど、描写をしないんで。人に与えられたからと言って棒読みにならないように気をつけることが楽しかったし、難しかったです。

■今回の作品は、デジタルシングルとしてリリースされてるんですよね。
Miney:これまではツアーに行ってたんで、気に入った方にすぐお渡しできるのがいいなと思ってたんで盤にもしてたんですけど、今回はそういうのはないから。でも、ブックレットとかをちゃんとPDFでお渡ししてるんで、そこでわかってもらえたらいいかな。この2曲を次のアルバムに収録するとしたら、たぶん録り直すだろうから。

■ジャケットのイラストが少女漫画風なのはどうして?
Miney:面白くないですか(笑)。

Tacky:衝撃ですよね。

Miney:みんなに最初に見せたら、偶然そんな漫画があったんじゃないかって勘違いして(笑)。うちのバンドのキャラクターでバーバラちゃんっていう女の子がいるんですけど、今回はちょっと違う画風で表現できたら、ネタとして面白いかなと思ったんです。

Mashoe:僕は男兄弟しかいないんで、全然少女漫画になじみなかったんでわからなかったんですよね。

■ああ、そうなんですね。知ってるとすごく懐かしいですよ。
Miney:誰かのパくりって言われないように、でもありそうなラインを攻めるのが難しかったです。いろいろありますからね。『ベルばら』と『キャンディキャンディ』だとだいぶ違うから。

■そうそう(笑)。
Miney:あくまでこれはネタです。

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■さて、9月10日のMashoeさんの誕生日には、配信ワンマンがありますね。
Miney:お金とるやつね(笑)。

■毎週金曜のツイキャスは無料ですからね。
Mashoe:誕生日に配信でワンマンをするなんて想像してなかったんで、見る人もどういう気持ちなのかなとか、どれぐらいの人が見てくれるのかなって、若干の不安というか。できれば配信だからいろんな人に見てもらいたいし、普段ライヴに来れない人もいると思うんで、配信だから見てみようと思ってもらえたらいいですね。

■誕生日らしいことも含めた内容になるんですか。
Miney:Mashoeの誕生日おめでとうっていうのを大前提に置きつつ、夏の総括になりますね。『ボートが揺れた/ブーツを脱いで』以外に、過去のバンドの曲を今の編成で録り直した作品(『Bit2』)も出したんですよ。その2枚を中心に組み立てて、2020年夏の思い出をしっかりとそこで刻み付けようかと思います。

■そして、10月16日にはTackyさんのお誕生日の配信ワンマンですね。
Tacky:ここ数年毎年、誕生日にはハロウィンのコスプレワンマンみたいなのをやってたので、それの配信バージョンで今年もそういう感じでやろうかなと思ってます。

■皆さんコスプレすると。
Miney:そうですね。去年の段階では、2020年はTHE ALFEEの格好をしようと言ってたんですけど、数少ないみんなの前に姿を現せられるタイミングで、さすがにTHE ALFEEはないなって。

Mashoe:THE ALFEEが悪いわけじゃないですよ(笑)。

Miney:そうそう。でもMashoeが桜井さんの格好をして、

Mashoe:オールバックにサングラスでしょ。

Miney:久々に見てそれを見たいかと言ったら、ちょっと申し訳ない気持ちになるから。いや、桜井さんが悪いわけじゃないけど(笑)。

Tacky:こういう環境じゃなかったらやってたかもしれないけどね。毎年、来てくれるお客さんもコスプレしてたりするんですけど、配信だからどうかなぁ。

Mashoe:みんなも友達とかと仮装して、ZOOMしながらとかで見てくれたらね。

■配信ワンマンも決まりましたが、毎週金曜日のツイキャスの生演奏はずっと続くんですよね。
Miney:はい。ツイキャスのほうは、なんか見ちゃうな、ぐらいでもいいんですけどね、ラジオじゃないけど。曲を知らなくてもなんとなく見てみてほしいですね。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。