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”LGBT”に関して意外と見落とされがちなこと

LGBTという言葉が日本でも普及だしたのは、わたしの記憶では2010年頃からですが、アメリカで使い始められたのは1988年からだそうです。

その後、性的マイノリティはLGBTだけではないだろうと、いろんな頭文字がくっつきました。長いのでは、LGBTQQIAAPPO2Sなんていうのもありますが、性的マイノリティの総称としては、LGBTQもしくはLGBTQ+あたりが定着しつつあるように思われます。

それはさておき、元々の言葉としてのLGBTに関して言及しますと、LGBとTではぜんぜんカテゴリーが違う言葉だとお気づきの方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。

というように指摘すれば気づく方も多いと思いますが、LGBは性的指向に関する概念であり、Tは性自認に関する概念なのです。

性的指向とは、好きになる相手の性別に関することでして、女性が好きな女性がL(レズビアン)、男性が好きな男性がG(ゲイ)、同性も異性も好きになる人がB(バイセクシャル)です。

一方、性自認とは自分が男女どちらの性であると思っているかということであり、FtMトランスジェンダーというのは肉体的には女性として生まれたが自分を男だと感じる人のこと、MtFトランスジェンダーとはその逆の人のことです。なお最近は、FtMトランスジェンダーをトランス男性、MtFトランスジェンダーをトランス女性というようになっており、以下そのように呼びます。

ここまでで男性、女性と言っているのは、肉体的な性別(セックス)のことです。またあえて区別して男、女と書いているのは社会的な性(ジェンダー)を意味しています。

以上はあえて単純化して書いていますが、実際にはもっと複雑です(下の余談参照)。またさらに問題を複雑にしているのは、男性でも女性でもないインターセックスと言われる人もいれば、自分を男でもあれば女でもあると思っている人、自分が男か女か区別したくない人、自分を男とも女とも思いたくない人、自分が男か女かわからない人という人たちもいるということです。

ここまでくると、自分の肉体的な性と社会的な性が一致している人たち、すなわち性的マジョリティ(シスジェンダーとも言う)には何のことやらわからない人も多いでしょうし、中にはただただ気持ち悪いと思う人もいることでしょう。わたしはそれを否定しません。世の中には当事者にしかわからないことがたくさんあり、わたしも当事者でないがためにたくさんの偏見を持っていると自覚しています。

さてここまでは長い前置きでして、言いたいことはこれからです。

ジェンダーフリーとか男女平等と言われる時代において、トランスジェンダーの多くはジェンダーに関して保守的です。わたしはトランス女性ですので、いわゆる「女らしさ」にこだわっています。

TPOにあわせてユニセックスな格好をすることもありますが、できるだけスカートを穿きたいですし、メイクもアクセサリーもしっかりしたいです。女らしいといわれる仕草や話し方のほうが好きですし、声も女声を作ります。

ここまでの価値感はトランス女性ならだいたい共通していると思いますが、以降は人それぞれでしょう。わたしは家事が好きで、本当は専業主婦になりたいです。子どもも産みたかったです。だから、女性からはその苦しみを知らない者が何を言うと言われるでしょうけれど生理もきてほしかったのです。

このように極めて保守的というより封建的な女がわたしです。それが一部のフェミニストからはトランス女性というだけで嫌悪の対象になり得たりするわけですから、世の中わけがわかりません(本当はわかります)。

男性に生まれておきながら女になりたい人間なので、女性が女的な役割を押しつけられることにはもちろん反対です。男性も女性もインターセックスも好きなジェンダーを生きればいいし、ジェンダーフリーでもジェンダーレスでもいいと思うのです。

世の中ジェンダーフリーの傾向が強くなっているのですが、男らしさ、女らしさという概念がなくなってほしくないのは、むしろトランスジェンダーだったりするわけです。言いたかったのはそれだけなのに、ずいぶん長くなりました。

【余談】
たとえば「ゲイ」という言葉1つとっても複雑で、そこにはセックスとジェンダーが絡みあっています。

ゲイにもマジョリティとマイノリティがありまして、マジョリティは本当に男性同士。テレビドラマで言えば、「おっさんずラブ」とか「きのう何食べた?」の感覚です。多少おネエっぽいとしても、基本はどちらも男性で女装などしません(パーティではしたりしますが)。

ですが、男性が好きで、男性に愛されたいがために女装する男性もいます(ちなみに女装子と言われる女装趣味者のほとんどは女性が好きですが、中には途中から性的指向が変わる人もいます)。その中にはわたしのようなトランス女性もいますが、そうでない人もいます。

ではそうでない人はゲイなのでしょうか。わたしはゲイだと思いますが、いわゆる「ハードゲイ」と呼ばれる人たちの中には、それはゲイではないと言う人もいます。

あるいはトランス男性で性別適合手術を受けた人の中でも男性が好きという人がいます。この人ははたしてゲイなのでしょうか。本人は絶対ゲイと言うと思いますが、決めかねる人も多いように思います。

このようにいっけんシンプルに見えるLGBについてもなかなか複雑な面があり、マスコミも行政もちょっと単純に考えすぎではないかと思うことも多いです。そもそもLGBTQ+当事者もカテゴリが違えば、わからないことだらけなのでしかたないことと思いますが、ただ違うということは理解していますし、だからこそ互いに尊重しているわけです。

※タイトル画像に笑い猫さまのイラストを使わせていただきました。ステキなイラストをありがとうございます。


自分のしたいことと向き合うことで、わたしはしあわせになれたと思っています。わたしの生き方を知って、ちょっとでも癒やされる人がいればいいなあという気持ちで書いています。スキやフォローは本当に励みになりますので、よろしくお願いいたします。