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ゼロの ひかり

新緑が ちからづよい

これまでひとの意識の勢いに遠慮していたような地が

よりいきいきしているのが分かる

経済絶望視の世間のテンションとうらはらに わたしはこの状況にいま 自然体を感じている

数年前行ったネパールの田舎 月曜の昼過ぎ 人々と牛や犬がひとつ木立の木陰で何するわけでもなく座っていた

あの彼らのつくっていた不思議な時間  あれを思い出している

今わかるのは 

極限にかけ離れている大地と ひとの その感覚


彼らは 大地のもつ時間感覚に無意識に寄り添って生きていたのだろう



寝転ぶと 無数の種類の草花がそれぞれのきらめきを 喜びそのものとして全身全霊放っては 散って次へ場を継いでいる

ひとつの悠久としてのいのちが めくるめく変幻を繰り返して


そのひかりのすべてに埋もれていくとき 一切の人間的活動を捨て このひとつの悠久に もう帰ってゆきたいと わたしのどこかが願っていることに気づく


この春のひかりは 未来のこの星を既視したあの透明度に限りなく 近い

そしてそれは 

わたしのすべての生に含まれる すべての涙と すべての喜びと輪になって ゼロになり わたしでないすべてへ溶けあった その透明なひかりとおんなじだった