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たけはら深雪
2020年9月19日 23:44
重い風に逆らうように土手を歩くいつまでも歩いていたいと思ったいつまでも川の流れを堰き止めているのは大量の藻だった その藻を一心不乱に解いている老人がいた解かれた藻は次々と開放され川面を飛ぶように軽く下って行く日常が解かれていくのだその時一筋の追い風が吹く橋の向こうで秋を祝うように曼珠沙華の緋色が風景を目覚めさせた
2020年7月26日 17:05
このところ午後になると空の色が変わるたちまち現れる分厚い雲は何か言葉を含んだように私を誘っている私は空色のリボンをつけてゆっくりと歩いて行く雲により添いながら空は緑色になって木々がざわめくどこかで出会ったような風が不意に通り過ぎる迷い込んだ道 森への道子供のころのように帰りたくないようなうしろめたいようなそんな気持ちになる森の入り口では野
2020年2月29日 20:09
春一番が吹くように別れは突然に来るもの風が去ったあと日常がガラスケースの中に詰められていた私はオルガンを弾く無邪気な歌声が聴こえる当たり前のように過ごした日々がガラスケースの中で想い出という名前になったしかし風は優しい風は時間だけを切り取りさらっていくからだから想い出というものはこんなに綺麗ガラスケースの中の"もうない日常"を外側から見ている私は今日ま
2020年2月24日 22:18
木漏れ日に冬の風がやわらかに吹く天気のよい休日に昨日までなかった花の色を見る薄桃色のそれは尊い人の魂の色のようにひとつひとつ濃く生まれ変わるように開く風景も風の匂いも人の声も新しくするようにみずみずしい艶を放って咲くこれだけ天気のよい休日やわらかな冬の風に抱かれてささやかなお祝いをする薄桃色の花の色の魂の有る処にそっと生まれ変われるように祈るように
2021年9月2日 20:26
薄紫の慎みで小さな星の粒を守っているような桔梗の鐘のかたちに沿って青空の扉が開く残月が山風を連れてくる渡りの支度をする鳥たちがぎりぎりのところで星の粒を数えている紫の花のふくらみに隠れてしまってもなお忘れることなく数えている…
2021年8月21日 00:10
窓辺に打ちつけるの雨の不協和音が、物悲しい笑みの余韻を引き立てている。あなたがいた海の記憶を集めた点描の絵が、コンクリートの壁に掛かっている〜鍵のついた扉を開けると鏡の世界へ行ける。金色の蛾が、鱗粉を撒き散らしながら紫色の夜に誘うように。「鏡」雨の日はラヴェル
2021年8月27日 23:34
輪郭のない肖像画 それは水浸しの風景の中に閉じ込められているうずまき模様に滲んだ水彩のように私の前に時々現れる懐かしい痛み原色の光が明滅する交差点で夏の太陽を切り裂くように激しく私はアスファルトの上で倒れる誰も私のことなど知らないのに刺すような眼差しにやられてしまったようだ いややってしまったようだ そう 刺すような眼差しを誰もその人のことなど知らないのにその人はア
2021年6月30日 22:40
雨の日の亡霊 竹原深雪元気ならいいですここにいますノイズにまみれて聞こえるやさしい雨の中であなたの声だけが喋っているみたい風雨にさらされて亡霊のようにかすんでいてもそれはあなただとわかった声が波紋のように広がっていくどこまでもそしてあなたの小舟が銀の波に消えて行くのをじっと見ていたそれがいつのことだったのかもう忘れてしまったけれどわたしが砂になる頃西の空に輝