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茶の道ー中国お稽古日記

 北京で日本の茶道を教えている。対象者は北京で仕事や学校に通っている中国人・日本人の社会人、学生さん。中国人で日本語ができない人には中国語で、できる人には日本語で話して日本語の練習も一緒にしてもらっている。
 北京の稽古場は裏千家のものなので、数名の講師が火・木・土の午前・午後・夜のクラスで教えている。共同の稽古場なので、生徒さんたちで茶室の掃除や準備、稽古の準備をする。日本では先生個人のお稽古場だったりすると、軸を掛けるのも茶花をいけるのも先生がされていると思うが、北京は生徒さんがやっている。なので、茶花がちょっと…ということもあるが、ここはこうした方がいいよ、というアドバイスをしながら少し手直しはするものの、生徒さんがいけたものはそれはそれで青さや若さがあり素敵なので、そのままかざっておく。そもそも北京の花市場には茶道で使えるような和の花などほとんどなく、花選びも一苦労なのだから。

 昨日8月6日(土)は8月最初の稽古日。今日は夏休みもあり午前の生徒さんは7名、午後は4名ほど。それでも茶室の掃除から準備からほぼ時間通りに間に合わせてくれた。朝一同揃ってご挨拶。そこで私の方から簡単に中国語で8月の日本の行事について説明。
 私は京都生まれ(育ちは大阪だが)で両親ともに京都出身なため、8月の夏休みは西陣にあった祖父母の京町屋で過ごした。家のすぐ裏に神社があったのでうっそうとした木々が生い茂り、うるさいほどの蝉しぐれ、夕方の打ち水。お盆には鬼灯などを飾ってご先祖様をお迎えして、16日の五山送り火。16日の大文字が過ぎると、日中はまだまだ暑いのに、夕方には初秋の気配を感じるようになる、そんな夏休みを過ごしていた…などと、簡単にかなりはしょって中国語で説明するのだが、「ご先祖様の霊をお迎えする」「送り火」などの説明を単に口頭でしたところで、中国人生徒さんは「???」状態。
 でもこうした行事も中国の道教、中元節とも関係があるんですよ、というと、中にはうなづく生徒さんもいる。全部説明する必要もない。日本の茶道というのがただ単にお茶を点てるという孤立した、独立したものではなく、歴史的背景、文化的背景があって成立してきたものであることを知ってもらえればいいと思っている。長く稽古を続けることで、少しずつ理解を深めてもらえればいいのだから。
 写真はお茶室の様子。昨日は、濃茶を久しぶりにお稽古する学生さんのお稽古を見て。長緒、棚の薄茶、盆略点前のお稽古も指導。少し時間があったので、平花月も。私が花月が大好きで、訳の分からない状態の生徒さんたちに無理やり?花月をさせていたら、皆さんも花月が好きになってくれた模様。30分ほど時間が出来ることが分かると、「先生、花月してもいいですか」と聞いてくるので、「いいですよ。でもさっと準備して!すぐ始めるよ!」とはっぱをかけながら花月をする。毎回違う役が回って来るし、私が「右足で立って」「いまは左足よ」などと言いまくるので、生徒さんたちは頭の中に「???」がぐるぐると回っている状況で終わると足も頭も疲れてぐったりしているのだが、楽しいらしい。
 ここは中国北京だけれども、日本の茶道が好きで熱心にお稽古に通って来てくれている中国人の方もいる。それもまた事実。

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