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『ガウディとサグラダ・ファミリア展』に行ってきました!

少し日が経ってしまってしまいましたが、行ってました!
※現在は東京国立近代美術館での開催は終了しております。

自分の博物館・美術館巡りの中でも少々特殊な位置だと思っているので、展示のおはなしの前にちょっとだけ自分の話をさせてください。
自分は絵や漫画を描きますが、背景、特にパースの付いた建物への苦手意識が非常に強く、そういったものたちと向き合うときは少しでもハードルを下げたり決意を固めたりしてなんとか描いているような状態でした。前から今までずっと。
そもそも建築物自体にあまり興味が持てておらず、大学の頃に東洋建築史も西洋建築史も受講したことは覚えているのですが恥ずかしながらまるで身についておりません…出身大学がバウハウスにすごく影響受けてるなあ…ってことは覚えている…
そんな自分ですが、これまでにないくらい建物の資料を集めて、それが面白いかも、と思えたことがあります。5年前〜去年までの、二次創作をしていた頃です。決して上手くはなかったけど、資料を見て、描きたいものに近い写真をいくつも集めて、相変わらずの強い苦手意識をなんとか押さえつけて描いていたものはそれまで自分が描いていたものよりほんの少しまともに見え、資料集めをしているときはじめて『建築って面白いかも』って思いました。

話を戻します。今回のこの展示は、アントニ・ガウディの展示会であり、サグラダ・ファミリア贖罪聖堂の展示会でもあります。恥ずかしげもなく書きますが、今思えば私はこの建築物と建築家のことをほとんどなにも知らずにこの展示を見に行きました。
どうしても行かなければいけないと思ったからです。
なぜかはわかりませんが、他の建築物よりも少し『知りたい』っていう気持ちが強かったからと、以前より少し建築に興味が持てていたというのもあるかもしれません。
美術館・博物館の良いところは、このくらいのスタートの人間でも好奇心さえあればしっかり勉強させてくれるところだと思っております!

さて、前置きが長くなりました。
この展示、1章から5章まであるのですが写真撮影が可能なエリアは3章のみ。なので今回は写真少なめです。

サグラダ・ファミリアの展示・説明に至るまでに、ガウディがどういった人生を歩み、何に影響を受け、どういった思考で、どれだけの建築物と向き合ってきたかがたくさんの資料と共に展示されていました。
目を凝らしても見えないくらい緻密な設計図。
欧州の大聖堂にはじまり、だんだん東方、イスラム圏の建築の影響が入っていきます。カラフルな破砕タイルの表現はこの後のサグラダ・ファミリアの建築にも使われており、豊かな曲線の数々は生命、動植物から着想を得たとありました。
大地の侵食造形から着想を得て作られた公園や庭園たち、個人的に好みだったのでこの時代のものももっと知りたいと思いました。

ここまで見ていってもかなり異質で、天才的だと思ってしまいました。それまでの建築学を丁寧に踏襲していて、それでいてそれまでになかった新しいものを次々と作っていく。作風もどんどん新しいものを取り入れていく。
そしてこのあと出てくるのが、サグラダ・ファミリアのあの形に繋がる逆さ吊り実験です。紐と重りの組み合わせで理想の曲面立体を探していく実験は想像を絶するものだと思います。(文章だけで表現するのはやっぱり難しいですね…検索すると実際にガウディが手がけた実験の写真などもいくつか当たります)
サグラダ・ファミリアのあの不思議な形は一体どこから来たのだろうと思っていたました。それまでにガウディが積み上げてきた末に辿り着いた形状なのだろうなということは理解出来ましたが、それはそうとして規模があまりに大きすぎるし、それを100年以上かけて作り続けている、ってやっぱりとんでもないことだと思いました…

ここまで外装のことばかり書いてきましたが、サグラダ・ファミリアは内装もすごかったです…自然光を取り入れるためのたくさんのステンドグラスや、森の中の木漏れ日のような天井、数学的な円柱。そして、この聖堂がすぐには完成しないとして、作りながら機能していけるように地下の礼拝堂から作られたのも驚きです。

卓上十字架と卓上燭台
主身廊天井ヴォールト模型
側廊高窓模型

この彫刻は『降誕の正面』に施されているものの一部ですが、なんと日本人の外尾悦郎さんという方が手掛けたそうです。海外の世界的な建築に、日本人の方がこういう形で携わっているって本当にすごいことだし、それを知ることが出来たのが嬉しく思いました。

マリアの塔:星の冠の試作品

ガウディの死後も、建築は続けられていきます。
1886年末から現在にかけての写真が展示されていましたが、そのあまりの壮大なスケールと、この建築物を完成まで持っていくという世代を超えた人たちのことを思ってかなんだか泣きそうになってしまいました…
完成を見てみたい気持ちはもちろんあるのですが、もしかして完成途中を見られることが出来ているのもとんでもないことなのでは、とも思います。
この展示を見たら、非常に実物を見てみたくなりました!日本から出たことがないので海外旅行はちょっと勇気を出さなければなりませんが、「この目で見てみたい!!」という気持ちにさせられます。

最後に、名言の多いガウディの言葉の中で、今の自分に一番深く響いた言葉を記しておきます。

「創造は、人を介して途絶えることなく続くが、人は創造しない。人は発見し、その発見から出発する。」

アントニ・ガウディ

20代の頃の自分は、無から有を作り出すことは出来ないとわかっていつつも、誰も見たことのない作品を作らなければ、それこそが創作だ、と悪い方向に囚われていたんですよね。影響を受けたものを公表するのもすごく怖かったです。すごく好きだから影響を受けたはずなのに。
この言葉を20代の頃に知っていたらまた違っていたかもしれませんが、今このタイミングで、この展示と共にこの言葉を知ることが出来て良かったです。

美術館や博物館の特別展は人生が豊かになった気持ちになりますが、ガウディとサグラダ・ファミリア展はそれだけに留まらないような、なにかずっしりとしたものを受け取った気持ちです。この展示を見に行けて本当に良かったです。