ひとやすみ(台所の呼び方、鹿児島弁)

 「百二(でふっどん――台所の神棚)」を書きながら、台所はなんと呼んでいたかずっと考えていた。もちろん鹿児島弁で。

 どうしても思い出せないので、インターネットの鹿児島弁辞典を引いたところ「おすえ」とか「あれもんどこい」と出ている。

 「おすえ」の語源は「御末」。家の末、つまり端っこにあるところ。鹿児島弁によくあるように、御所の女房言葉が残ったものかもしれない。「あれもんどこい」は「洗い物どころ」。こちらのほうが一般的な気がする。が、どちらも使っていた記憶がない。

 困惑していたら、やはりインターネット上の別の鹿児島弁辞典に「ながし(流し)」「ながしば(流し場)」「ながしどこ(流し所)」と出ていた。そうそう、わが家を含む近隣の一般家庭では「ながし」と呼んでいたのではないか。本来は、野菜や魚を洗う流し台の意味だろうが、流し台がある部屋(場所)を指すようになったのだと思われる。

 ちなみに「ながし」の3音をそのまま発音するのではなく、あえて書けば「ナガシ」のように、「ガ」の音が強く、最期の「シ」はほとんど子音のみで促音に近かった。

例文:この大根を台所へ持って行きなさい。→「こん でこんの ながし もって いかんか。」
「でこん(だいこん)」の「N」と「を」の「O」が繋がって、「でこんの」となる。
「ながしへ」の「え」はなくなってしまう。「ながしへ(え)」が短縮され「ながしさえ」「ながしせぇ「と変化することもある。

 ちなみに「もって いかんか」は命令調で、どちらかというと男言葉、それも若干粗野な感じだ。女性なら「もって いっきゃんせ」(持って行きやんせ)、女性が第三者に言うなら「もって いっきゃはんか」(持って行きなさらんか)など、発話者自身やその対象との関係の違いによって、多様なパターンがあり得る。

《参考》
鹿児島弁ネット辞典(鹿児島弁辞典)>おすえ
鹿児島弁辞典>おんじょどいの小屋>「な」


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