太宰治「斜陽」

かず子の革命物語。
太宰の中で一番好き。ただ一般的に言われている"没落していく人々を描いた"とはあまり思わない。
お嬢様のかず子が、お嬢様らしく世間知らずな"革命"を志す。それは、お嬢様だからゆえ、おままごとにも等しい"恋の革命"なのだけれど、その革命に一意にうちこむ姿がいい。ハタから見れば滑稽ひとしお。でも、ご本人は大真面目。最初は、やれやれお嬢様が革命気取ってだめ男に一所懸命になっちゃって〜とか思っていても、怖いぐらいの執念をもって革命を成し遂げようとするのを見せつけられるうちに、これはもしかしら"正しい生き方なのかもしれない"と思ってしまう。

私も自分の中で多くの革命を起こしてきたけれど、革命を志すことができる『時代』なんだよなぁと妙な感慨が起こってきた。そして、私の起こした革命は、あくまでも個人の枠をでない範囲での革命。
かず子のように、たとえそれが恋の革命だったとしても、世の中に小さな爪痕を残すようなものではなかった。
かず子の革命は、恋の革命から始まったのに、最終的には日本人の道徳観を揺るがそうとする、道徳革命にまで昇華した。かず子、侮るべからず。
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