白石一文「神秘」下

何なんだろうこの読後感は。
上巻では癌により余命1年、という主人公菊池の"生"に対する考察が中心だったのに対して、下巻はそこに"震災による死"という観点が追加される。そういう『内なる死』と『外なる死』を対比させつつ死生観についてさらに深めていく。
人間関係が嘘みたいに繋がりあっていて、それこそ"狭い世間"が物語の中心になっていく。あまりにも繋がりがありすぎて、その人間関係が1人の人間なんじゃないかと思えるほど。でも、冷静になってみればこのぐらいの繋がりは私たちの人生にもあるのかもしれないとも思わせる。なぜなら、余命を宣告されていない私たちは、毎日の"生活"に必死で(これは悪いことではないと思うけど)、身近な物事の因果や詳細について深く考えもしなければ追求もしないから。

そもそもどうして菊池はやよいに電話をかけようとしたのか、つまりやよいはあの時どうしてムツゴロウさんの連絡先を知りたがったのかが気になって眠れなくなりそうだった。

あまりにも多くの出来事が起こりすぎていて、目が回りそうになるところもあったけど、往々にして人生というものは、多くの出来事が起こりすぎるぐらい起こるものだ。

ちょいちょい出てくる超能力が腑に落ちなかったけど、よくよく考えてみたら、因果というものは、人間に説明可能な因果とそうでない因果があるのだよ、ということのほのめかしだったんじゃないかという結論に辿りついた。

読み応えありまくり。
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